「お互いにこの関係は苦しい」と感じているのに、なぜか離れられない。
距離を取ろうとすると不安になり、結局また以前と同じ関係へ戻ってしまう。
こうした関係を理解する手がかりの1つが、共依存という考え方です。
共依存は、もともとアルコールなどの依存症を抱える人と、その家族やパートナーとの関係を説明する文脈で使われてきた言葉ですが、現在では恋愛や夫婦、親子など、さまざまな人間関係の中で起こる関係のパターンとして使われています。
その中でも親子関係は、もともと親が子どもを守り、世話をし、助けるところから始まる関係です。そのため、成長したあとも役割や距離感が変わらないままだと、共依存的な関係が生まれやすい側面があります。
この記事では、親子の共依存とはどのような関係なのか、依存が循環する仕組みや特徴、子離れ・親離れとの違い、関係を変えていくための考え方について解説していきます。
Contents
- 親子の共依存で起きていること
- 親子の共依存が固定される流れ
- 1. 親が心配から介入する
- 2. 子どもが判断を親へ戻す
- 3. 親が必要とされて安心する
- 4. 介入と依存が強まっていく
- 親子の共依存に見られる特徴
- 1. 相談が許可取りに変わる
- 2. 援助と介入の境目が曖昧になる
- 3. 距離を取ると双方が不安になる
- 4. 大人同士の関係へ移りにくい
- 子離れ・親離れとの役割の違い
- 1. 子離れは親側の分離を見る
- 2. 親離れは子ども側の自立を見る
- 3. 共依存は二人の循環を見る
- 共依存の循環を変える方法
- 1. 子ども側|相談と許可取りを分ける
- 2. 親側|先回りして助けすぎない
- 3. 双方|相手の不安を背負わない
- 4. 双方|助け合いと決定権を分ける
- 共依存から大人同士の親子関係へ
親子の共依存で起きていること
親子の共依存を考えるときに大切なのは、「親が依存している」「子どもが依存している」と、どちらか一方だけを見るのではなく、2人の間で何が繰り返されているのかを見ることです。
たとえば、親が成人した子どもの仕事や恋愛について心配し、細かく意見を言うとします。
子どもは最初こそ「自分で決めたい」と感じていても、迷ったときには親へ相談し、最終的には「どうしたらいいと思う?」と判断を求める。
親はそれを受けて、「やはりこの子にはまだ自分が必要なんだ」と感じます。
すると次の場面でも、親は先回りして考えたり、心配して口を出したりするようになります。
子どもの側も、親に聞けば答えを出してもらえるため、大きなことほど親へ相談するようになります。
こうして、
親が介入する
↓
子どもが親を頼る
↓
親が必要とされる
↓
さらに親が介入する
という循環ができていきます。
この関係では、親と子どものどちらか一方だけが「依存している」とは限りません。
親にとっては、子どもから必要とされることが安心や自分の役割につながっています。
一方の子どもにとっては、親から答えをもらったり、承認してもらったりすることが安心につながっています。
それぞれが違うものを相手から受け取ることで、同じ関係が維持されているのです。
親子の共依存が固定される流れ
では親子の共依存は、どのようなプロセスを経て固定されていくのでしょうか?
このような関係はある日突然できあがるものではなく、日常の中で同じやり取りが繰り返されるうちに、「親は関わる側」「子どもは頼る側」という役割が少しずつ固定されていきます。
ここからは、親子の共依存が続いていく代表的な流れを見ていきます。
1. 親が心配から介入する
最初に起こりやすいのが、親が子どものことを心配し、本人の人生へ深く関わることです。
- 仕事はうまくいっているのか
- 付き合っている相手は大丈夫なのか
- お金には困っていないのか
- 将来はどうするつもりなのか
親にとっては、子どもを心配すること自体は自然な感情です。
ただし、心配することと、本人の代わりに考えたり決めたりすることは同じではありません。
親が不安になるたびに事情を聞き、意見を言い、先回りして問題を解決する状態が続くと、親自身も子どもの人生へ関わることが当たり前になっていきます。
2. 子どもが判断を親へ戻す
親から長く助言や手助けを受けていると、子どもの側も迷ったときに親へ判断を求めるようになります。
「転職したいんだけど、どう思う?」
「この人と結婚して大丈夫かな?」
「一人暮らししたいけど、やめた方がいいかな?」
もちろん、親へ相談すること自体が問題なのではありません。
大人になってからも、家族に話を聞いてもらったり意見を求めたりすることはあります。
ただ、自分で考えたあとに意見を聞くのではなく、親の答えがないと決められない状態になると、判断そのものを親へ戻すようになります。
自分がどうしたいかよりも、「親がどう思うか」が先に必要になる状態です。
3. 親が必要とされて安心する
子どもから相談されたり、判断を求められたりすると、親の側にも安心が生まれることがあります。
「まだ自分を頼ってくれている」
「この子には自分が必要だ」
「自分が支えてあげなければならない」
という感覚です。
特に、長い間親であることが生活の中心だった人ほど、必要とされることが自分の役割や存在意義と結びついている場合があります。
子どもが自分で何でも決めるようになることは、本来は成長でもあります。
ところが、必要とされなくなることに寂しさや空白を感じると、子どもが頼ってくれる状態の方が親自身も安心しやすくなります。
その結果、子どもの自立を望んでいるつもりでも、頼られればすぐに答えたり、問題を代わりに解決したりする関係が続いていきます。
4. 介入と依存が強まっていく
親が関わるほど、子どもは自分だけで判断する機会が減ります。
自分で決める機会が減るほど、大きな選択をするときに不安になり、さらに親を頼りやすくなります。
すると親も、「やはり自分が支えなければ」と感じます。
この繰り返しによって、親の介入と子どもの依存が互いを強めていきます。
親は「この子が自分でできないから手伝っている」と感じ、子どもは「親がいろいろ言うから自分で決められない」と感じるかもしれません。
どちらの感覚にも、それぞれの立場から見た理由があります。
ただ、関係全体を見ると、親の行動が子どもの反応を生み、その子どもの反応がまた親の行動を強めるという循環が起きています。
親子の共依存を考えるときには、誰が悪いのかを決めるより、この循環がどこで続いているのかを見ることが重要になります。
親子の共依存に見られる特徴
親子の共依存は、必ずしも激しい干渉や大きなトラブルとして表れるとは限りません。
ただ、一見すると仲の良い親子に見えていても、その関係の中でお互いが自由に動きにくくなっていることも珍しくありません。
ここからは、親子の共依存に見られやすい特徴を4つ見ていきます。
1. 相談が許可取りに変わる
親へ相談することと、親の許可をもらうことは似ているようで異なります。
相談であれば、親の意見を聞いたあとに、最終的には自分で考えて決めることができます。
ところが、
- 「親が賛成してくれたらやる」
- 「反対されたらやめる」
- 「納得してもらえるまで説明する」
という状態になると、相談が少しずつ許可取りへ変わっていきます。
本人は自分で決めているつもりでも、実際には親の承認が決定の条件になっています。
親の側も、相談されるたびに意見を求められるため、自分が子どもの人生を判断する役割から離れにくくなります。
2. 援助と介入の境目が曖昧になる
親子であれば、困ったときに助け合うこともあります。
- お金を貸す
- 病気のときに手伝う
- 話を聞く
- 一時的に生活を支える
こうした援助そのものが共依存なのではありません。
問題になるのは、どこまで助けるのかという境目がなくなっていくことです。
子どもが困るたびに親が問題を処理し、本人が引き受けるはずのことまで親が担うようになる。
あるいは、子どもが助けを求めていないことまで、親が先回りして決める。
この状態が続くと、助けているのか、本人の領域へ入っているのかが分かりにくくなります。
3. 距離を取ると双方が不安になる
共依存的な親子関係では、それまでの距離を変えようとすると、親と子どもの双方に不安が出ることがあります。
子どもが親へ相談する回数を減らすと、親は「何かあったのではないか」「もう必要とされていないのか」と不安になる。
一方で子どもも、自分で決めようとすると「本当にこれでいいのだろうか」「親に聞いた方が安心できる」と感じる。
すると、一度距離を変えようとしても、不安を解消するために以前の関係へ戻りやすくなります。
関係が苦しいのに離れにくいのは、このように今の関係そのものが双方の安心を支えている場合があるからです。
4. 大人同士の関係へ移りにくい
子どもが大人になると、親子という関係自体は維持されたまま、関係の「形」が変化していきます。
その際、親が守り、教え、決める関係から、それぞれが自分の生活や価値観を持つ大人同士の関係へ移っていくのですが、共依存的な関係では、この切り替えが起きにくくなります。
親はいつまでも子どもを守る側に残り、子どもも親に判断してもらう側に残ります。
年齢は大人になっていても、関係の中の役割だけが昔のまま残っている状態です。
子離れ・親離れとの役割の違い
では、親子の共依存と重なる部分も多い、子離れや親離れとの違いについて見ていきましょう。
それぞれ「どの角度から問題を見るのか」を押さえると、わかりやすいでしょう。
1. 子離れは親側の分離を見る
子離れでは、主に親の側で何が起きているのかを見ます。
- 子どもが大人になったあとも保護者意識が強く残っている
- 子どもの人生と自分の人生の境界が曖昧になっている
- 親であることが自分の存在意義と強く結びついている
こうした背景によって、親が大人になった子どもを手放しにくくなっている状態です。
つまり、子離れでは「なぜ親は子どもの人生へ関わり続けるのか」が中心になります。
詳しく読む:子離れできない親との付き合い方|ストレスの理由と対処法
2. 親離れは子ども側の自立を見る
親離れでは、子どもの側の自立を見ます。
- 経済的にも生活面でも自立していても、親の承認がないと決められない
- 親が反対すると、自分の判断に自信が持てなくなる
- 自分がどうしたいのかより、親がどう思うのかを優先する
こうした状態から、親の価値観と自分の価値観を分け、自分の判断基準を持っていくことが精神的な親離れにつながります。
つまり、親離れでは「なぜ自分の人生を親から分けにくいのか」が中心です。
詳しく読む:親離れできない大人とは?精神的に自立する方法
3. 共依存は二人の循環を見る
親子の共依存で見るのは、その2つがどのようにつながっているかです。
- 親が子離れできないから、子どもが親離れできない
- 子どもが親を頼るから、親も子離れしにくくなる
実際の関係では、どちらか一方向だけで説明できないことがあります。
親の介入が子どもの依存を強め、その依存が親の介入をさらに強める。
共依存という視点では、このように2人の行動や感情が互いに影響しながら、同じ関係を維持していることに注目します。
そのため、親子の共依存を変えるためには、相手だけを変えようとするより、自分がこの循環のどこに参加しているのかを見ることが大切になります。
共依存の循環を変える方法
親子の共依存は、どちらか一方が突然相手を必要としなくなれば終わるというものではありません。
長い間続いてきた関係には、それぞれが担ってきた役割があります。
そのため、関係を変えるときには、親子の縁を切ることよりも、これまで自動的に繰り返していたやり取りを少しずつ変えていくことが重要になります。
ここからは、そのための4つの方向を見ていきます。
1. 子ども側|相談と許可取りを分ける
子ども側でまず見直したいのが、親へ相談することと、親の許可をもらうことの違いです。
仕事や結婚、住む場所などについて、親の意見を聞くことはできます。
- 親が賛成したらやる
- 反対されたらやめる
- 納得してもらえるまで説明する
という状態になると、相談ではなく、親の承認が決定の条件になっています。
親に意見を聞くことと、最終的な判断を親へ預けることは別です。
「どうしたらいい?」と答えを求めるのではなく、「私はこう考えているけれど、どう思う?」と意見を聞く。
親の考えを聞きながらも、最後に決める役割は自分に残すことが、依存の循環を変える一歩になります。
2. 親側|先回りして助けすぎない
親側で見直したいのは、子どもが困る前に先回りして動くことです。
- 失敗しそうだからアドバイスする
- 困りそうだから代わりに調べる
- 迷っているから答えを出してあげる
親からすると助けているつもりでも、それが繰り返されると、子ども自身が考えたり、試したり、失敗したあとに立て直したりする機会が少なくなります。
子どもが困っていることと、親が解決する必要があることは同じではありません。
すぐに答えを出す前に、「あなたはどうしたいと思っているの?」と聞いてみる。
頼まれていないことには、少し待ってみる。
親が一歩引くことで、子ども側にも自分で考え、自分で決める余地が生まれます。
3. 双方|相手の不安を背負わない
親子の関係を変えようとすると、それまでとは違う不安が出てくることがあります。
子どもが自分で決め始めれば、親は「もう自分は必要ないのだろうか」と寂しさや心配を感じるかもしれません。
反対に、親がすぐに答えを出さなくなれば、子どもは「自分だけで決めて大丈夫なのだろうか」と不安になることがあります。
ここで大切なのは、相手が不安になったからといって、自分がその不安をすべて解消する必要はないということです。
- 親が心配しているから、自分の選択を変える
- 子どもが不安そうだから、親が代わりに決める
そうすると、一時的には安心できても、これまでの関係へ戻りやすくなります。
相手の不安を理解することと、その不安を自分が引き受けることは別です。
お互いが自分の不安を自分のものとして持てるようになることも、関係を変えていくために必要になります。
4. 双方|助け合いと決定権を分ける
共依存から離れることは、親子で助け合わなくなることではありません。
大人になってからも、困ったときには相談したり、力を借りたり、支え合ったりすることがあります。
変えていきたいのは、助けてもらうことと、人生を決めてもらうことが一緒になっている状態です。
親は、意見を伝えたり必要なときに手を貸したりしながらも、本人が決める領域を残す。
子どもは、親の助けを受けることがあっても、最終的な判断やその結果まで親へ預けない。
「助ける人」と「決める人」が同じである必要はありません。
支え合いながらも、それぞれが自分の人生について決定権を持つ関係へ変わっていくことで、親子の間で繰り返されてきた依存の循環も少しずつ弱まっていきます。
共依存から大人同士の親子関係へ
この記事では、親子の共依存とはどのような関係なのか、依存が循環する仕組みや特徴、子離れ・親離れとの違い、関係を変えていくための考え方について解説してきました。
親子の共依存では、どちらか一方だけに大きな問題があるとは限りません。
むしろ、心配すること、助けようとすること、相手を思いやることなど、お互いを大切にする気持ちから始まった関わりが、結果として共依存的な関係につながっていくことも多いでしょう。
そのため、どちらかが関係のあり方を変えようとすると、「相手を裏切っているのではないか」「見捨てることになるのではないか」と罪悪感を持つことも珍しくありません。
共依存から離れることは、親子で助け合わなくなることでも、まったく関わらなくなることでもありません。
必要なときには支え合いながらも、それぞれが自分の人生について決定権を持つ。
そうして境界線を持ちながら関わることで、親子というつながりを保ったまま、親と子という役割だけにとどまらない、大人同士の関係へと親子関係を成熟させていくことができます。