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自己肯定感とは?心理学的な意味と心の仕組み

自己肯定感とは?心理学的な意味と心の仕組み

「自己肯定感を高めよう」「自己肯定感が低いから自信が持てない」など、近年では自己肯定感という言葉を耳にする機会が多くなりました。

けれども、自己肯定感とは具体的にどのような感覚なのか、自信や自分を好きになることと何が違うのか、はっきり説明するのは意外と難しいものです。

この記事では、自己肯定感の心理学的な意味と心の仕組み、自己肯定感の高さと安定性、似た心理概念との違いについて解説していきます。

Contents

自己肯定感とは?その定義を解説

自己肯定感とは、自分自身を価値のある存在として肯定的に捉える感覚のことです。

心理学では、英語のセルフエスティーム(self-esteem)に相当する概念として扱われ、自分自身の価値をどのように評価しているかに関わります。

この概念を理解するうえで重要なのが、アメリカの社会学者モリス・ローゼンバーグ(Morris Rosenberg、1922–1992)の研究です。

ローゼンバーグは、自分自身を全体としてどのように評価しているかに注目し、自己肯定感を測定するための尺度を開発し、この尺度は現在も、心理学の研究で広く使用されています。

自己肯定感が関わるのは、特定の能力に対する評価だけではなく、自分という人間全体に対する評価です。

例えば、仕事で失敗したときに「今回はうまくできなかった」と考えることと、「私は何をやっても駄目な人間だ」と考えることには違いがあります。

前者は仕事上の出来事や能力に対する評価ですが、後者は自分という人間全体への否定的な評価につながっています。

反対に、仕事で失敗しても、自分自身の価値まで否定することなく受け止められる人もいます。

このように、出来事や能力への評価と、自分自身の価値をどう感じているかは、必ずしも同じではありません。

自己肯定感は、自分に対してどの程度肯定的な評価を持っているのかを表す心理学的な概念と言えるでしょう。

自己肯定感の高さと安定性

自己肯定感について考えるとき、多くの場合は「高いか、低いか」という点に注目します。

しかし、心理学では、自己肯定感の高さだけでなく、その評価がどの程度安定しているかも大事な指標として研究されています。

この2つの側面を知ることで、同じように自信がある人でも、失敗や他者からの評価に対する反応が異なる理由を理解しやすくなります。

1. 自己肯定感の高さとは

自己肯定感の高さとは、自分自身を全体としてどの程度肯定的に評価しているかを表すものです。

自己肯定感が高い人は、自分の長所や能力を肯定的に捉えるだけでなく、自分という存在に対しても比較的よい評価を持っています。

一方、自己肯定感が低い人は、自分の価値を十分に感じられなかったり、自分自身に対して否定的な評価を持ちやすかったりします。

例えば、同じように仕事で成果を上げていても、「自分には十分な能力がある」と感じる人がいる一方で、「この程度ではまだ認められない」と感じる人もいます。

客観的な成果が似ていても、自分自身に対する評価は異なるのです。

また、自己肯定感の高さは、自分の能力を実際以上に高く見積もっているかどうかとは別の問題です。

自分の苦手なことや限界を理解していても、自分自身に対して肯定的な評価を持つことはできます。

自己肯定感の高さは、他人より優れているかどうかではなく、自分自身をどのように評価しているかを示しています。

2. 自己肯定感の安定性とは

自己肯定感の安定性とは、成功や失敗、周囲からの評価などによって、自分自身の価値の感じ方がどの程度変動するかを表すものです。

例えば、普段は自分に自信があり、自己肯定感が高いと感じている人でも、誰かに批判された途端に「自分には価値がない」と感じることがあります。

一方、失敗や批判によって落ち込んだとしても、自分という人間全体への評価は大きく変わらない人もいます。

この違いが、自己肯定感の安定性です。

自己肯定感が不安定な人は、外部からの評価や出来事によって、自分自身の価値の感じ方が大きく揺れ動きます。

  • 褒められると自分に価値があると感じるが、批判されると急に自信を失う
  • 仕事がうまくいっているときは自分を肯定できるが、失敗すると自分自身を否定する
  • 誰かに必要とされると安心するが、期待に応えられないと自分の価値まで疑ってしまう

これらに共通するのは、自分自身の価値に対する評価が、外側の出来事によって大きく変化していることです。

心理学者のマイケル・カーニス(Michael H. Kernis)らは、自己肯定感の高さと安定性を区別し、両者が心理的な反応にどのように関係するかを研究してきました。

その研究では、自己肯定感が高くても不安定な人は、他者からの否定的な評価に対して、防衛的に反応しやすいことなどが示されています。

つまり、自分自身を肯定的に評価していることと、その評価が安定していることは、別の側面なのです。

自己肯定感を理解する際には、普段どの程度自分を肯定しているかだけでなく、どのような出来事でその評価が揺らぐのかにも目を向ける必要があります。

自己肯定感が低くなる原因や特徴、具体的な高め方については、『自己肯定感が低いのはなぜ?』で詳しく解説しています。

自己肯定感と似た心理概念の違い

自己肯定感は、自己受容や自己効力感、自己一致など、自分自身との関係に関わる心理概念と深いつながりがあります。

これらは互いに関連していますが、それぞれが注目する心の働きは異なります。

ここでは、自己肯定感との違いを整理します。

1. 自己受容との違い

自己受容とは、自分の長所だけでなく、短所や弱さ、不完全な部分も含めて、自分自身を受け入れることです。

自己肯定感が「自分には価値があると思えるか」に関わるのに対し、自己受容は「自分のよいところも、そうでないところも認められるか」に関わります。

例えば、自分の苦手なところに気づいたとき、「こんな自分には価値がない」と感じるのは、自己肯定感に関わる問題です。

一方、「これは自分の苦手なところだけれど、それも自分の一部だ」と認めることは、自己受容につながります。

自己受容は、自分のすべてを好きになることではありません。

苦手なところや、できないことがあっても、それを否定せずに認めることです。

このように、自己肯定感は自分の価値をどう感じているか、自己受容は自分自身をありのままに受け入れられるかという違いがあります。

2. 自己効力感との違い

自己効力感とは、ある課題や目標に対して、「自分にはできる」と思える感覚のことです。

この概念は、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura、1925–2021)が提唱しました。

自己肯定感が「自分には価値があると思えるか」に関わるのに対し、自己効力感は「自分にはその行動ができると思えるか」に関わります。

例えば、人前で話すことが苦手で、「大勢の前ではうまく話せる自信がない」と感じている人がいたとします。

これは、人前で話すことに対する自己効力感の問題です。

だからといって、その人が自分自身に価値を感じていないとは限りません。

反対に、仕事では「自分にはできる」と自信を持っていても、自分という人間にはなかなか価値を感じられない人もいます。

つまり、自己効力感は「自分に何ができると思っているか」、自己肯定感は「自分自身をどのように評価しているか」という違いです。

3. 自己一致との違い

自己一致とは、自分が実際に感じていることと、自分自身についての認識が一致している状態を指します。

アメリカの心理学者カール・ロジャーズ(Carl R. Rogers、1902–1987)が重視した概念です。

自己肯定感が「自分には価値があると思えるか」に関わるのに対し、自己一致は「自分が実際に感じていることを、そのまま認められているか」に関わります。

例えば、「私はいつも前向きな人間だ」と思っている人が、実際には強い不安や悲しさを感じているとします。

それでも「自分がこんなに落ち込むはずはない」と気持ちを否定しているなら、実際の感情と自分についての認識にずれが生じています。

一方、「今の自分は落ち込んでいるんだな」と認められれば、普段の自分とは違う感情も、自分自身のものとして理解できます。

自己一致で大切なのは、いつも前向きでいることではなく、自分が実際に感じていることを否定せずに認められるかどうかです。

自分の価値をどう感じているかという自己肯定感とは、注目している部分が違うのです。

自己肯定感は自分との関係を知る手がかり

この記事では、自己肯定感の心理学的な意味や、その高さと安定性、似た心理概念との違いについて解説してきました。

私たちは生きていく中で、さまざまな人から認められたり、成功や失敗を経験したりしながら、自分自身に対する評価を形作っていきます。

そうした経験を通じて自分を肯定的に捉えられるようになることもあれば、反対に、自分の価値を認められず、生きづらさを感じるようになることもあります。

近年、自己肯定感という言葉は広く使われるようになりましたが、その高さだけでは見えてこないものもあります。

自分は何を根拠に自分を肯定してきたのか、どのような経験によって自分の価値を感じたり、感じられなくなったりしてきたのか。

自己肯定感という概念は、そうした自分自身への評価がどのように形作られ、何に支えられているのかを理解するための手がかりになるのです。