転職したいけど何がしたいかわからない。
なんとなく転職サイトを開いて求人を眺めてみるけれど、条件検索のところで手が止まってしまう。
そんな人も少なくないのではないでしょうか。
今は転職だけでなく、副業や兼業など働き方の選択肢も広がっており、厚生労働省も多様なキャリア形成を後押しする環境整備を進めています。
そして選択肢が増えた分、「今の会社を辞めたい」という気持ちはあっても、その次に何を選べばいいのかわからないという迷いも生まれやすくなりました。
この記事では、転職活動を始める前に考えておきたい思考整理の4ステップについて解説していきます。
Contents
不満はあるけど特にやりたいこともない宙ぶらりんさ
今の会社には何かしら不満がある。
このままずっと働き続けるのも違う気がする。
だからといって「よし、転職しよう」と勢いよく動き出せるほど、次にやりたいことが決まっているわけでもない。
この宙ぶらりんな状態は、意外とストレスがかかります。
辞めたいほどの何かがあるのに、進みたい方向は見えないからです。
そして、この状態が続くと「私は何がしたいんだろう」と考える時間ばかりが増えて、今の仕事への不満だけが少しずつ積み重なってしまうでしょう。
そもそも人は、満足していることやこれから望むことよりも、今感じている不満や嫌なことの方に気づきやすい傾向があります。
そのため「今の仕事のここが嫌だ」は比較的すぐに出てきても、「じゃあ次は何がしたい?」と聞かれると、急に答えが出なくなることがあります。
そんな宙ぶらりんな時期は、無理に「やりたいこと」をひねり出すよりも、まず今の自分が何に不満を感じ、仕事に何を求めているのかを一つずつ分けて考える方が、次の方向を見つけやすくなります。
何がしたいかわからない時の思考整理4ステップ
まだ転職すると決め切っていない宙ぶらりんな時期は、中途半端に見えるかもしれませんが、見方を変えれば、次の選択が確定していないからこそ、自分の仕事についてゆっくり考えられる時期でもあります。
実際に求人へ応募し、面接や条件交渉が始まれば、目の前の転職活動を進めることに意識を取られます。
ここからは、その前にやっておきたい思考整理を4つのステップで見ていきましょう。
1. 今の仕事で何を変えたいのか洗い出す
最初に考えたいのは、「何がしたいか」ではなく、今の仕事の何を変えたいのかです。
一口に「転職したい」と言っても、その中身は人によって違います。
- 仕事内容そのものが嫌なのか
- 勤務時間や休日などの働き方を変えたいのか
- 上司や同僚との人間関係に疲れているのか
- 給与や評価制度に納得できないのか
- 仕事内容にはそれほど不満はないけれど、この会社にいることに飽きてきているのか
ここを分けずに全部「転職したい」にまとめてしまうと、次の会社にも必要以上に多くの条件を求めることになります。
たとえば、人間関係が一番の問題なのに「私にはもっと向いている仕事があるのでは」と職種探しを始めても、探している答えがずれています。
反対に、人間関係も待遇も悪くないのに仕事内容そのものに興味を持てないのであれば、職場を変えるだけでは同じ違和感が残る可能性があります。
まずは転職先を考える前に、「今の状態から何が変われば、私は今より働きやすくなるのか」を考えてみます。
転職したい理由が見えてくると、次の仕事で変える必要があるものと、そのままでいいものを分けられるようになります。
2. 自分にとっての「仕事」を再定義する
2つ目は、自分にとって仕事とは何なのかを考えることです。
ここは意外と考えたことがない人も多いかもしれません。
仕事の基本的な構造は、自分の時間や労働力、知識やスキルを使って誰かに価値を提供し、その対価として報酬を受け取ることです。
その上に、私たちはそれぞれ違う意味を乗せています。
生活費を得るための手段として仕事をする人もいます。
社会とのつながりや役割を持つために働く人もいます。
成長や自己実現の場として仕事を大切にする人もいれば、自分を表現する大切な場所として仕事を選ぶ人もいます。
どこまでを仕事に求めるかによって、仕事選びの基準は大きく変わります。
仕事は安定した収入を得られれば十分だと思っている人と、仕事そのものに生きがいや自己表現を求める人では、「良い転職」の意味も違います。
ところが、自分が仕事に何を求めているのかを整理しないまま「何がしたいんだろう」と考えると、答えの範囲があまりにも広くなります。
仕事に人生の意味まで求めているのか。
ある程度興味を持てて生活が安定すれば十分なのか。
仕事は生活の一部と考えて、仕事以外の時間を充実させたいのか。
ここを一度決め直してみるだけでも、探すべき仕事の範囲はかなり変わります。
自分の希望そのものがわからなくなっている場合は、自己対話とは?「本音がわからない」を解消するメンタルスキルも参考になります。
3. 仕事選びを難しくする前提を洗い出す
3つ目は、自分が仕事選びにどんな前提をつけているのかを見ることです。
今は「好きなことで生きる」「才能を生かす」「自分らしく働く」といった言葉に触れる機会が多くなりました。
そうした働き方が自分に合う人もいます。
一方で、それらをすべて仕事選びの必須条件にすると、一気に選択が難しくなります。
- 好きなことでなければならない
- 得意や才能を生かさなければならない
- 自分らしい仕事でなければならない
- 仕事を通して人生の意味や自己実現を得なければならない
この条件を全部満たす仕事を探そうとすれば、「何がしたいかわからない」となるのも不思議ではありません。
仕事に意味や喜びを求めることと、それを仕事の必須条件にすることは別です。
好きなことが仕事になればうれしい。
才能が生かせればうれしい。
仕事を通して成長できればうれしい。
その中で、自分にとって何が「絶対に必要」で、何が「あればうれしい」なのかを分けてみます。
すべてを必須条件から外す必要はありません。
自分でも気づかないまま必須条件にしていたものを、一度確認することに意味があります。
「私にしかできない仕事を見つけなければ」と考えていた人が、「自分にできて、必要としてくれる人がいる仕事なら候補にしていい」と考えられるようになれば、選択肢は大きく変わります。
4. 自分なりの仕事選びの基準をつくる
4つ目は、ここまで整理した内容をもとに、自分なりの仕事選びの基準をつくることです。
何がしたいかわからないときは、「やりたいこと」だけを出発点にする必要はありません。
たとえば、
- 今の自分にできること
- 人から求められていること
- やっていて強い苦痛を感じないこと
この3つから考えることもできます。
これまで普通にやってきた仕事の中にも、自分では気づいていない経験やスキルがあります。
また、自分の内側だけで考えるのではなく、求人を見ながら「今どんな仕事が求められているのか」を知ることで、自分の経験を生かせる場所が見つかることもあります。
「これが絶対にやりたい」と思える仕事がなくても、自分にできて、誰かに求められていて、少なくとも自分にとって嫌ではない仕事なら、十分に選択肢になります。
最初はそこから選び、実際に経験する中で「もっとやってみたい」「この分野は面白い」と思えるものが育っていくこともあります。
できることと続けられる仕事の違い
「やりたいことがないなら、できることから探す」と考えると、今度は別の問題が出てきます。
できる仕事が、そのまま自分に合う仕事とは限らないからです。
ここでは「できる」と「続けられる」の違いを3つに分けて考えてみます。
1. できるけれど続けたくない仕事
1つ目は、能力や経験はあるけれど、今後はその仕事を続けたいと思わないケースです。
長く経験してきた仕事ほど、転職では「強み」として扱われやすくなりますが、できることと、これからも使いたい能力は同じではありません。
たとえば、クレーム対応を長く担当してきた人なら、相手の話を聞く力や状況を整理する力、感情的な場面でも対応できる力を持っているでしょう。
一方で、本人が「もうクレーム対応を中心にした仕事はしたくない」と思っているなら、その経験をそのまま次の職場でも使う必要はありません。
転職では、これまでできたことを確認するだけでなく、その中で今後も使いたい能力と、もう使いたくない能力を分けることも大切です。
2. できるけれど消耗する仕事
2つ目は、仕事としては問題なくこなせても、続けるための負荷が大きいケースです。
外から見ると仕事ができているため、自分でも「向いている仕事」と判断しやすいところがあります。
たとえば、
- 成果は安定して出せる
- 周囲から評価されている
- 人より早く処理できる
- 任される仕事も多い
という状態でも、毎日の疲労が大きく、休日のほとんどを回復に使っているなら、長期的に続けやすい仕事とは限りません。
消耗の原因は、仕事内容そのものだけではありません。
仕事量やスピード、勤務時間、人との関わり方、責任の重さなどによっても変わります。
そのため、「この職種が向いていない」とすぐに結論づけるより、何をすると消耗するのかまで分けて考えると、変えるべきものが見えやすくなります。
仕事内容はそのままで働く環境を変える方が合う場合もあれば、仕事内容そのものを変えた方がいい場合もあります。
3. できて求められて無理なく続けられる仕事
3つ目は、自分にできることが誰かから求められていて、自分にとっても大きな負担なく続けられる仕事です。
仕事を選ぶとき、「好きかどうか」だけで考えると候補はかなり限られる一方で、次の3つが重なる仕事まで範囲を広げると、選択肢は増えます。
- 自分にできる
- 誰かから求められている
- 無理なく続けられる
この3つがそろっていれば、最初から「これこそ自分がやりたかった仕事」と思えなくても、十分に転職先の候補になります。
仕事は、自分が提供できるものと、それを必要としている人や組織があって成り立つものです。
そこに「自分が続けられるか」という条件を加えることで、単にできる仕事ではなく、自分にとって現実的な仕事を探しやすくなります。
自分に向いている仕事がわからないときと同じように、何がしたいかわからないときは、強い「やりたい」を探すよりも、できる・求められる・続けられるの重なりを見る方が、次の選択肢を具体化しやすくなります。
仕事にどこまで自己実現を求めるのか
仕事を考えるときに、自己実現をどこまで求めるかも人によって違います。
仕事を人生の中心に置く人もいれば、人生を構成する1つの要素として考える人もいます。
ここでは、仕事と自己実現の距離を3つに分けて考えてみましょう。
1. 仕事を自己実現の中心にする
1つ目は、仕事そのものを自己実現の中心に置く働き方です。
- 自分の能力を使って何かを成し遂げたい
- 専門性を高めたい
- 社会に大きな価値を提供したい
- 自分が本当にやりたいことを仕事にしたい
こうした思いが強い人にとって、仕事は収入を得る手段以上の意味を持ちます。
その場合は、給与や勤務条件だけでなく、仕事内容や裁量、成長機会、仕事を通して何を実現できるかまで含めて転職先を選ぶ必要があります。
仕事が人生の中で大きな割合を占めるからこそ、仕事に求める条件も多くなります。
2. 仕事は自己実現の一部と考える
2つ目は、仕事を自己実現の一部として考える働き方です。
仕事にもやりがいや成長を求める。
同時に、家族や友人との時間、趣味、学び、旅行など、仕事以外にも大切なものがある。
このタイプであれば、仕事に人生のすべてを満たしてもらう必要はありません。
ある程度興味を持てる仕事をしながら、安定した収入や時間も確保する。
自己実現を人生全体に分散させる考え方です。
仕事だけで「本当の自分」を完成させようとしなくなると、転職先を見るときの条件も少し変わってきます。
人生全体の方向について考えたいときは、自分のために生きるとは?意味と自分の人生を取り戻す方法も参考になります。
3. 自己実現は仕事以外にも求める
3つ目は、仕事は主に生活を支えるものと考え、自己実現は別の場所に求める働き方です。
- 安定した収入を得る
- 無理なく続けられる
- 生活の時間をきちんと確保できる
仕事にはそこまでを求めて、創作や趣味、家族との生活、副業、地域活動など、別の場所で自分らしさや充実感を得る人もいます。
仕事が人生のすべてである必要はありません。
仕事以外に大切にしたいものが明確なのであれば、それを守れる仕事を選ぶことも立派な仕事選びです。
「何がしたいかわからない」と悩んでいた人が、実は仕事で何かを成し遂げたいわけではなく、生活の余白を増やしたかったと気づくこともあります。
仕事について考えるときには、「どんな仕事がしたいか」と一緒に「仕事を人生のどの位置に置きたいか」も考えてみると、自分に合う条件が見えやすくなります。
何がしたいかわからなくても次の仕事は選べる
この記事では、転職したいけど何がしたいかわからないときの思考整理について解説してきました。
「何がしたいか」だけを考え続けると、答えが出ないまま動けなくなることがあります。
今の仕事の何を変えたいのか、自分は仕事に何を求めているのか、仕事選びにどんな条件をつけているのかを整理すると、「やりたいこと」以外にも仕事を選ぶ基準が見えてきます。
そのうえで、自分にできること、求められていること、無理なく続けられることの重なりから次の仕事を考えていけばいいのです。
転職先を選ぶために、最初から人生をかけてやりたいことまで決める必要はありません。