心の不調で仕事を休み、療養を経て、ようやく職場に戻れた。ところが復職してみると、以前なら普通にできていた仕事に時間がかかったり、1日働いただけでぐったり疲れたりする。そんな自分に焦りを感じている人もいるかもしれません。
この記事では、復職後に前のように働けないことで焦る理由と、その焦りから無理をしてしまう心の動き、復帰後の働き方をどう捉えていけばいいのかについて解説していきます。
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復職できた≠休職前と同じように働ける
心の不調で休職し、療養を経て復職すると、生活の中心が再び仕事へ戻っていきます。決まった時間に起きて通勤し、職場で人と関わりながら、集中したり判断したりする時間も増えていく中で、休職前の自分のギャップを時折感じることもあるでしょう。
復職した時点では、仕事に戻れるところまで回復していても、休職前と同じ仕事量やスピードで働ける状態まで戻っているとは限りません。
実際に仕事を始めると、通勤だけで思った以上に疲れたり、午前中は動けても午後になると集中力が落ちたりと「こんなはずでは…」という気持ちになってもおかしなことではありません。
こうした変化は、家で療養している間には見えにくく、実際に職場へ戻って仕事をする中で初めてわかる部分です。
復職できたという事実は「休職前と同じように働くことができる」という意味ではありません。自分にとって無理のない働き方を再構築することが復職後には大切になってきます。
復職後に無理をしてしまう4つのパターン
復職すると、仕事に戻れた安心感がある一方で、「早く以前のように働きたい」という気持ちが出てくる人も少なくないでしょう。
その焦りから、自分でも気づかないうちに仕事のペースを上げたり、必要以上に頑張ったりすることがあります。
ここからは、復職後に無理をしてしまいやすい4つのパターンを見ていきましょう。
1. 休職前の自分と比べる
復職後の自分を見たとき、最も比較しやすいのが休職前の自分です。
- 前はこの仕事を午前中に終わらせていた
- これくらいの残業なら平気だった
- もっとたくさんの仕事を同時に回せていた
以前の自分をよく知っているからこそ、今できなくなっていることもはっきり見えます。
昨日より少しできるようになったことより、「休職前ならできたこと」に目が向き、「まだ元に戻れていない」と感じやすくなります。
特に、休職前に多くの仕事を抱えていた人や、責任のある仕事を任されていた人ほど、その差は大きく感じられるでしょう。
「以前の自分ならできた」という記憶が基準になることで、今の状態以上の仕事量やスピードを求めやすくなります。
2. 周囲と同じように働こうとする
職場に戻ると、周囲の人が仕事をこなしている様子が毎日目に入ります。
朝から仕事を進め、予定をこなし、次の仕事へ移っていく。その流れの中に自分も戻ると、周囲と同じように動けないことが目につきやすくなります。
時短勤務だったり、仕事量を調整してもらっていたりすると、なおさら周囲との差を意識しやすくなるでしょう。
- みんなはこれだけやっているのに
- 自分だけ仕事が少ない
- 同じ職場に戻ったのだから、自分も同じくらい働きたい
そんな比較が重なると、今の自分がどこまで働けるかより、周囲と同じように働けるかどうかが気になり、仕事量やペースを上げようとしやすくなります。
3. 迷惑をかけた分を仕事で取り戻そうとする
休職している間、自分の仕事を同僚が引き継いでくれたり、周囲が予定を調整してくれたりした人もいるでしょう。
そのことを知っていると、「迷惑をかけた」「負担をかけてしまった」という罪悪感が残りやすくなります。
罪悪感には、自分が相手に与えた負担や損失を埋め合わせようとする方向へ行動を促す働きがあります。
心理学では、こうした埋め合わせの行動を補償行動と呼ぶことがあります。
復職後の職場では、その補償行動が「仕事で返す」という形で表れることがあります。
- 少し疲れていても仕事を引き受ける
- 頼まれた仕事を断らない
- 周囲より早く帰ることが気になって残ろうとする
- できるだけ早く以前と同じ戦力に戻ろうとする
「休んだ分を取り戻したい」という気持ちが強くなるほど、今の自分ができる仕事量より、周囲への埋め合わせを優先しやすくなります。
4. 復職したら元通りに働けると思う
「復職」という言葉には、元の職場へ戻るだけでなく、以前の状態へ戻るような感覚も伴いやすいものです。
- 職場に戻った
- 席も以前と同じ
- 一緒に働く人も同じ
- 以前の仕事も少しずつ戻ってくる
外側の環境が休職前と似てくると、自分自身も以前と同じように働けるような感覚になりやすくなります。
ところが、メンタルヘルス不調からの復職では、職場に戻った時点で休職前と同じ仕事量やペースまで回復しているとは限りません。
厚生労働省の職場復帰支援でも、復職後の勤務状況や業務遂行能力などを確認しながら、職場復帰支援プランを評価・見直していく過程が設けられています。
「復職できたから、もう元通りに働ける」と考えていると、実際の状態との間に差があっても、以前の仕事量やスピードへ早く戻そうとしやすくなります。
同僚への申し訳なさとどう付き合うか
復職後は、仕事そのものだけでなく、休んでいる間に周囲へかけた負担が気になることもあります。
その申し訳なさが強くなると、「何かで返さなければ」という気持ちが、仕事量や働き方に入り込みやすくなります。
ここからは、同僚への申し訳なさと仕事を切り分ける3つの考え方を見ていきましょう。
1. 申し訳なさと仕事量を切り分ける
休職している間に、自分の仕事を誰かが引き継いでくれた。忙しい時期に抜けたことで、周囲の負担が増えた。そうしたことを知っていると、復職後も「迷惑をかけた」という気持ちが残りやすくなります。
その気持ちが強いと、
- 頼まれた仕事を断りにくい
- 疲れていても仕事を引き受ける
- 早く帰ることに申し訳なさを感じる
- 周囲より多く働こうとする
といった形で、申し訳なさが仕事量に反映されやすくなります。
けれど、「申し訳ないと感じていること」と「どれだけ働くか」は別のものです。
仕事量は、罪悪感の大きさではなく、復職後の状態や業務内容、勤務時間などをもとに調整していくものです。
2. 感謝と埋め合わせを分けて考える
休職中に助けてもらった相手へ、感謝を感じることもあるでしょう。
その感謝が、「助けてもらった分を仕事で返さなければ」という気持ちに変わると、埋め合わせるための働き方になりやすくなります。
罪悪感や申し訳なさから、相手に与えた負担を埋め合わせようと行動することは、心理学では補償行動として説明されることがあります。
復職後であれば、
- 人より多く仕事を引き受ける
- 頼まれたことを断らない
- 早く以前と同じ戦力に戻ろうとする
といった形で表れることがあります。
助けてもらったことへの感謝と、同じだけ仕事で返すことは同じではありません。感謝は相手への気持ちであり、仕事量は働ける状態に合わせて決めていくものです。
3. 仕事量は今の回復状態を基準にする
申し訳なさを仕事量の基準から外すと、次に見る必要があるのは、今の自分がどこまで働けるかです。
復職直後は、1日働けたかどうかだけではなく、その働き方を続けたときにどうなるかも重要になります。
- その日は働けても、翌日に強い疲れが残る
- 週の前半は働けても、後半になると集中できなくなる
- 仕事を終えたあと、生活に必要なことまでできなくなる
こうした変化も、今の仕事量が合っているかを見る材料になります。
厚生労働省の職場復帰支援でも、復職後は勤務状況や業務遂行能力などを確認しながら、必要に応じて支援内容を見直していく流れが示されています。
復職後の仕事量は、「どれだけ休んだか」や「どれだけ迷惑をかけたと感じているか」ではなく、今の回復状態を見ながら調整していくものです。
復職しながら今の自分のペースをつかみ直す
復職すると、仕事に戻れたかどうかだけではなく、実際に働いたときに自分がどのように疲れるのかも少しずつ見えてきます。
休職前には当たり前だった仕事量や勤務時間でも、復職後の自分には負荷が大きく感じられることもあるでしょう。
ここからは、今の自分がどのくらいのペースなら働き続けられるのかを見る4つの視点を整理していきます。
1. 仕事中の疲れ方を見る
復職後は、仕事をしている時間の中で疲れ方がどう変化するのかが見えてきます。
- 朝は比較的動けても、午後になると集中力が落ちる
- 会議が続くと一気に疲れる
- 人と話す時間が長い日は、ひとりで作業している日より消耗する
同じ8時間働いていても、どの仕事にどれくらいエネルギーを使うかは一様ではありません。
休職前には意識していなかった仕事でも、復職後には思った以上に負荷が大きいと感じることがあります。
仕事中の疲れ方を見ることで、今の自分がどの場面でエネルギーを使いやすいのかが少しずつわかってきます。
2. 仕事を終えたあとの状態を見る
職場にいる間は働けていても、帰宅したあとに一気に疲れが出る人もいます。
仕事中は緊張していたり、周囲に合わせて動いていたりするため、疲れを感じにくいまま1日を終えることもあります。
- 帰宅すると何もする気になれない
- 食事や入浴も負担に感じる
- 横になったまま動けなくなる
こうした仕事後の状態も、その日の仕事量が今の自分にどの程度の負荷になっているかを見る手がかりになります。
「勤務時間を終えられた」という事実だけでは見えない疲れが、仕事を離れたあとに表れることもあります。
3. 翌日まで疲れが残っていないかを見る
その日の仕事を最後までこなせても、翌朝まで疲れが強く残ることがあります。
朝起きるのが極端につらくなったり、前日より集中しにくくなったり、仕事へ向かうだけで大きなエネルギーを使うようになったりすることもあるでしょう。
復職後のペースを見るときには、1日を乗り切れたかだけではなく、その仕事量からどのくらいで回復しているかもひとつの目安になります。
その日の負荷が翌日までどの程度残るのかを見ることで、今の自分にとって続けやすい仕事量も見えやすくなります。
4. 1週間続けたときの状態を見る
復職後は、1日単位では働けていても、数日続くと疲れ方が変わってくることがあります。
- 週の前半は比較的動けても、木曜日や金曜日になると集中力が落ちる
- 平日は仕事を続けられても、休日はほとんど寝て過ごす
- 週末に休んでも疲れが抜けず、翌週まで持ち越してしまう
こうした変化は、1日だけでは見えにくいものです。
仕事を続けたときに疲れがどのように積み重なっていくのかを見ると、今のペースが自分にとってどの程度の負荷になっているのかがわかりやすくなります。
復職後は、休職前の自分と同じペースに戻れているかだけを見るのではなく、今の自分がどのくらいの働き方なら続けられるのかを知り直していく時期でもあります。
実際に働く中で見えてきた疲れ方や回復のペースは、これからの働き方そのものを考えていく材料になります。
復職は以前の自分に戻る競争ではない
この記事では、復職後に前のように働けず焦るときに起きやすいことや、同僚への申し訳なさが働き方に影響する心理について解説してきました。
メンタルヘルス不調から職場へ戻ったあと、休職前の自分と現在の自分を比べたりして、以前のように動けない自分に戸惑うことも多いでしょう。
休職を経て復職した場合、無理に休職前の自分に戻ろうとするよりも、「これから無理なく続けられる働き方」へシフトしていく機会と捉えることもできます。
「以前はどこまでできたか」と「復職した今はどこまでできるか」そんな問いをしながら、これからの自分が心地よく働けるペースを見つけていきましょう。