「認めてほしい」「評価してほしい」「自分のことをわかってほしい」
人との関わりの中で、多くの人がこうした気持ちを感じたこともあるでしょう。
仕事や人間関係、恋愛、SNSなど、承認を求める気持ち=承認欲求はさまざまな場面に表れます。
この記事では、承認欲求とはどのような欲求なのか、なぜ強くなるのか、強くなるとどのようなことが起こりやすいのかについて解説していきます。
Contents
- 承認欲求とは?その定義を解説
- マズローの欲求段階説と承認欲求
- 承認欲求には2つの方向がある
- 1. 賞賛を得たいという気持ち
- 2. 拒否されたくないという気持ち
- 承認欲求が強い人の特徴
- 1. 他人の評価が気になる
- 2. 褒められると安心する
- 3. 否定や批判に強く反応する
- 4. 人と自分を比べやすい
- 5. SNSの反応が気になる
- 承認欲求が強くなりすぎる背景
- 1. 自分の価値を自分で確かめにくい
- 2. 認められることで安心してきた
- 3. 期待に応えることで評価されてきた
- 4. 比較や評価の多い環境で過ごしている
- 承認欲求が強すぎると抱えやすい悩み
- 1. 人の評価に振り回される
- 2. 本音が言えなくなる
- 3. 期待を優先してしまう
- 4. 認められても満たされない
- 承認欲求との付き合い方
- 1. 求めている承認を言葉にする
- 2. 他人の評価と自分の評価を分ける
- 3. 自分で自分を評価する視点を持つ
- 「認めてほしい」の気持ちを知る
承認欲求とは?その定義を解説
承認欲求とは、自分の存在や価値、行動や成果などを他者から認めてもらいたいと感じる欲求のことです。
「頑張ったことを評価してほしい」「自分の良さをわかってほしい」「必要とされたい」「大切な存在として扱ってほしい」といった気持ちは、承認欲求の表れとして考えることができます。
求めている承認の内容は人によって異なり、能力や成果を評価してほしい人もいれば、人柄を認めてほしい人、愛されていることや必要とされていることを確認したい人もいます。
また、承認欲求は「褒められたい」という形だけで表れるものではありません。
「否定されたくない」「嫌われたくない」「期待に応えたい」といった気持ちの背景にも、他者からどのように見られているかを意識する心理が関わっています。
マズローの欲求段階説と承認欲求
承認欲求といえば、心理学者Abraham Maslow(アブラハム・マズロー)の欲求段階説が最も有名でしょう。
マズローは、人間の欲求の1つとして esteem needs(エスティーム・ニーズ)を挙げています。日本語では「尊重の欲求」「自尊の欲求」などと訳される概念です。
この欲求には、自分自身に対する評価と、他者から受ける評価の両方が含まれています。
自分自身に対する評価には、達成感や自信、能力への実感、自立などが含まれます。
一方、他者から受ける評価には、尊重されること、認められること、評価されること、注目されることなどが含まれます。
日本語で一般に使われる「承認欲求」という言葉は、このうち特に、他者から認められたい、評価されたいという側面を指して使われることが多くなっています。
承認欲求には2つの方向がある
また承認欲求について、日本の社会心理学では、他者からの評価を求める欲求について「賞賛獲得欲求」と「拒否回避欲求」という2つの方向から捉える研究があります。
1. 賞賛を得たいという気持ち
1つ目は、周囲から肯定的に評価されたいという「賞賛獲得欲求」です。
たとえば、
- すごいと思われたい
- 能力を認めてほしい
- 頑張りを評価してほしい
- 周囲から注目されたい
といった気持ちが、この方向にあたります。
自分の良さや能力を相手に伝えたり、成果を積極的にアピールしたりする行動にもつながりやすい欲求です。
2. 拒否されたくないという気持ち
2つ目は、周囲から否定的に評価されたくないという「拒否回避欲求」です。
たとえば、
- 嫌われたくない
- ダメな人だと思われたくない
- 失望されたくない
- 周囲から浮きたくない
といった気持ちが、この方向にあたります。
相手に合わせたり、自分の意見を控えたり、失敗しないよう慎重に振る舞ったりする形で表れやすいのが特徴です。
賞賛獲得欲求と拒否回避欲求は、どちらか一方だけを持つものではなく、それぞれの強さには個人差があります。
そのため、同じように他人からの評価を強く意識していても、表に出る行動は人によって異なります。 (J-STAGE)
承認欲求が強い人の特徴
承認欲求が強い人の特徴としては、何があるのでしょうか。
ここでは代表的な5つをご紹介します。
1. 他人の評価が気になる
1つ目は、他人からどう見られているかを強く意識する傾向です。
自分では納得していても、周囲の反応がよくないと急に自信がなくなったり、「これでよかったのかな」と不安になったりします。
仕事であれば上司や同僚からの評価、人間関係では相手の表情や言葉など、自分に向けられた反応を細かく気にしやすいのも特徴です。
2. 褒められると安心する
2つ目は、褒められたり評価されたりすると安心しやすい点です。
「よくできたね」「あなたに任せてよかった」と言われることで、自分の行動や存在に自信を持てるようになります。
その一方で、思っていたような反応が返ってこないと、「評価されていないのではないか」と不安を感じることもあります。
3. 否定や批判に強く反応する
3つ目は、否定や批判を受けたときのショックが大きくなりやすいことです。
仕事上の指摘や意見の違いであっても、「自分そのものを否定された」と感じてしまう人もいます。
そのため、批判された場面を何度も思い返したり、相手の言葉を長く引きずったりしやすくなります。
4. 人と自分を比べやすい
4つ目は、自分の価値を確かめるために人と比べやすい傾向もあるでしょう。
「自分より評価されている」「自分より仕事ができる」「自分より幸せそう」と、周囲の人を基準に自分の立ち位置を確認します。
比較して自信を持てるときもあれば、自分の方が劣っていると感じた途端に落ち込みや焦りが強くなることもあります。
5. SNSの反応が気になる
5つ目は、SNSでの反応を気にしやすい人が多いでしょう。
投稿への「いいね」やコメント、閲覧数、フォロワー数などが、自分がどれだけ注目されているかを確認する材料になります。
反応が多ければ満足感を得られる一方、期待したほど反応がなければ気分が沈んだり、もっと反応をもらえる投稿を考え続けたりする人もいます。
承認欲求が強くなりすぎる背景
承認欲求は、もともと人間に備わっている基本的な欲求の1つです。
では、その承認欲求が、人間関係や生き方に影響するほど強くなるのはなぜなのでしょうか。
ここでは、その背景を4つの角度から見ていきます。
1. 自分の価値を自分で確かめにくい
1つ目は、自分の価値を判断するときに、他人の評価を基準にしやすいことです。
自分では頑張ったと思っていても、誰かに褒められなければ自信を持てない。
反対に、高く評価されると「自分には価値がある」と感じられる。
こうした経験が重なると、自分への評価を周囲の反応に委ねるようになり、認められたい気持ちも強くなっていきます。
2. 認められることで安心してきた
2つ目は、誰かから認められることが安心感につながってきたという背景です。
たとえば、
- 親に褒められると安心した
- 良い成績を取ると認めてもらえた
- 仕事で成果を出すと評価された
- 誰かに必要とされると自分の居場所を感じられた
といった経験です。
「認められると安心できる」という結びつきが強くなるほど、不安なときや自信を失ったときにも、他人からの承認を求めやすくなります。
3. 期待に応えることで評価されてきた
3つ目は、周囲の期待に応えることと、自分の価値が結びついているケースです。
「いい子でいる」「迷惑をかけない」「期待された役割を果たす」といった行動によって評価されてきた人ほど、相手が望む自分でいようとしやすくなります。
その結果、自分が何をしたいかよりも「どうすれば認めてもらえるか」が判断の基準になり、承認への依存が強まっていきます。
4. 比較や評価の多い環境で過ごしている
4つ目は、日常的に人と比べられたり、評価されたりする環境です。
たとえば、
- 学校の成績や順位
- 職場での評価や昇進
- 収入や肩書き
- SNSのいいねやフォロワー数
- 周囲の結婚や仕事などとの比較
こうした数字や評価が見えやすい環境では、「自分は周りからどう見られているか」を意識する機会も増えていきます。
比較が続けば、自分の価値を他人との優劣や周囲の評価によって確かめる癖もつきやすくなります。
承認欲求が強すぎると抱えやすい悩み
承認欲求が強くなりすぎると、他人から認められることが、自分の安心や判断を支える大きな基準になっていきます。
そこからどのような悩みにつながりやすいのか、代表的な4つを見ていきます。
1. 人の評価に振り回される
1つ目は、周囲の評価によって気持ちが大きく揺れやすくなることです。
褒められれば自信を持てても、反応が薄かったり否定的なことを言われたりすると、一気に自分への評価まで下がってしまいます。
相手の表情や言葉を気にし続けるため、人と関わるだけで疲れやすくなる人もいます。
2. 本音が言えなくなる
2つ目は、嫌われたり否定されたりすることへの不安から、自分の本音を抑えやすくなる点です。
たとえば、
- 本当は断りたいのに引き受ける
- 意見が違っても相手に合わせる
- 不満があっても言わずに我慢する
といった行動につながります。
相手からどう思われるかを優先するほど、自分が本当は何を感じているのかも見えにくくなっていきます。
3. 期待を優先してしまう
3つ目は、自分の希望よりも周囲の期待を優先しやすくなることです。
「何をしたいか」より「何をすれば認めてもらえるか」で選択する場面が増え、仕事や人間関係、人生の選択にも影響していきます。
期待に応え続けているうちに、自分が望んでいた生き方とのズレを感じる人もいます。
4. 認められても満たされない
4つ目は、望んでいた評価を得ても、安心や満足が長く続きにくくなることです。
認められた直後は満たされても、しばらくすると再び「もっと評価されたい」「次も認められたい」という気持ちが生まれます。
承認によって自分の価値を確かめようとするほど、次の承認を求め続ける流れができやすくなります。
承認欲求との付き合い方
承認欲求が強くなっているときは、他人からの評価を必要以上に気にしたり、認められないことへの不安が大きくなったりします。
そうしたときに、自分の中で何が起きているのかを整理する方法を3つ見ていきます。
1. 求めている承認を言葉にする
1つ目は、「誰に」「何を」認めてほしいのかを具体的にすることです。
「認められたい」という言葉だけでは、求めているものが曖昧なままになりやすいからです。
たとえば、
- 上司に仕事の能力を評価してほしい
- パートナーに大切にされていると感じたい
- 親に自分の生き方を認めてほしい
- 周囲から役に立つ人だと思われたい
など、相手と内容を分けて考えると、自分が求めている承認が見えやすくなります。
2. 他人の評価と自分の評価を分ける
2つ目は、他人から受けた評価と、自分が自分をどう見るかを分けて考えることです。
誰かから評価されなかったときに、「評価されなかった」という事実と、「自分はダメだ」という自己評価が一緒になっていないかを確認します。
たとえば仕事であれば、
- 今回の成果は評価されなかった
- 相手が求めていた基準とは違っていた
- 自分ではどこまでできたと思っているか
というように、外からの評価と自分の評価を分けて整理できます。
3. 自分で自分を評価する視点を持つ
3つ目は、他人の反応とは別に、自分自身でも自分の行動を振り返ることです。
誰かに褒められたかどうかだけではなく、自分ではどう感じているのかを確認します。
たとえば、
- 自分なりにできたと思うこと
- 前よりできるようになったこと
- 納得して選べたこと
- 自分では評価したいと思えること
などを見ていくと、他人からの評価以外にも自分を見る基準を持ちやすくなります。
「認めてほしい」の気持ちを知る
この記事では、承認欲求とは何か、なぜ強くなるのか、そしてその気持ちとの付き合い方について解説してきました。
「認めてほしい」という気持ちが強くなるとき、その奥には「安心したい」「自分の価値を確かめたい」「嫌われたくない」など、その人なりの理由があります。
同じ承認欲求でも、誰に認めてほしいのか、何を認めてほしいのかによって、その人が抱えているものは少しずつ違います。
自分の承認欲求が気になったときは、「私は今、誰に何をわかってほしいんだろう」と見ていくことで、自分の中で何が苦しくなっているのかも見えやすくなります。
「認められたい」という気持ちの奥にあるものが見えてくると、自分との付き合い方も少しずつ変わっていきます。