恋愛や人間関係について調べていると、「不安型」「回避型」「安定型」などの愛着スタイルについて目にすることも多いでしょう。
自分やパートナー、友人知人がどんなタイプなのかと調べてみると、3タイプと説明されていたり、4タイプに分けられていたり、「不安」と「回避」という2つの言葉で説明されていたりと、情報によって分類の仕方は少しずつ異なります。
そのため、「結局、愛着スタイルとは何なのか」「自分はどの型なのか」と、かえってわかりにくく感じる人もいるかもしれません。
この記事では、愛着スタイルの意味や研究上の成り立ち、代表的な分類、分類方法がいくつもある理由、固定された性格との違いについて解説していきます。
Contents
- 愛着スタイルとは?その定義を解説
- 愛着スタイルという考え方はどう生まれた?
- 1. 愛着研究は子どもと養育者の関係から始まった
- 2. その後は大人の恋愛や親密な関係にも研究が広がった
- 愛着スタイルにはどんな分類がある?
- 1. 安定型
- 2. 不安型・とらわれ型
- 3. 回避型・拒絶型
- 4. 恐れ型・恐れ回避型
- 愛着スタイルは必ず4つに分かれるの?
- 1. 研究によって分類方法や名称が異なる
- 2. 不安と回避の強さで捉える研究も多い
- 愛着スタイルが固定された性格とはいえない理由
- 1. 同じ人でも関係する相手によって傾向が異なることがある
- 2. 時間や経験によって傾向が変化することがある
- 愛着スタイルと関連する心のしくみ
- 1. 見捨てられ不安との関係
- 2. 依存・共依存との違い
- 3. 境界線・自己概念との関係
- 4. 感情調整・トラウマとの関係
- 愛着スタイルは人との関わり方を読み解く一つの枠組み
愛着スタイルとは?その定義を解説
愛着スタイルとは、親しい人との関係の中で、不安を感じたときに相手とのつながりをどのように求めるか、どのくらい人との親密さを受け入れやすいかといった個人差を捉えるための考え方です。
たとえば、相手との関係が不安定に感じられたとき、強くつながりを求める人もいれば、反対に距離を取ろうとする人もいます。
安心して人に頼れる人もいれば、頼ることそのものに抵抗を感じやすい人もいます。
こうした親密な関係で生じる感情や行動の傾向を整理したものが、愛着スタイルです。
その土台にあるのが、人が特定の相手との間に情緒的なつながりを形成する仕組みを扱う愛着の研究です。
愛着スタイルは、その愛着が人によってどのように異なる形で現れるのかを見るための枠組みとして使われています。
愛着スタイルという考え方はどう生まれた?
愛着スタイルという言葉を理解するには、もともとの愛着研究と、大人を対象とした愛着研究のつながりを見るとわかりやすくなります。
研究の対象が子どもと養育者の関係から大人の親密な関係へ広がる中で、現在使われている愛着スタイルの考え方も発展してきました。
1. 愛着研究は子どもと養育者の関係から始まった
愛着研究では、もともと乳幼児と養育者との関係が大きなテーマになっていました。
子どもは不安や危険を感じると養育者とのつながりを求め、安心できる状態に戻ると、そこから周囲を探索していきます。
こうした人との情緒的なつながりや、安心を得るための心の働きが愛着研究の出発点です。
その経験を重ねる中で、「困ったときに相手は応えてくれるか」「自分は受け入れてもらえるか」といった、自分や他者についての見通しも形づくられていくと考えられてきました。
愛着そのものの仕組みは、愛着について扱う記事で詳しく解説しています。
2. その後は大人の恋愛や親密な関係にも研究が広がった
1980年代になると、愛着の考え方は大人の恋愛関係にも応用されるようになりました。
1987年には、大人の恋愛も愛着のプロセスとして捉えられるという研究が発表され、安定型・回避型・不安/両価型という3つのスタイルが示されました。
その後の研究では、大人の親密な関係に見られる違いを、別の分類方法や複数の尺度から捉える研究も進んでいます。
現在「愛着スタイル」と呼ばれているものは、こうした成人の親密な関係を研究する中で発展してきた考え方です。
愛着スタイルにはどんな分類がある?
愛着スタイルは、一般向けの解説では4つのタイプとして紹介されることが多くなっています。
ここでは現在よく目にする4つの分類が、それぞれどのような傾向を表しているのかを整理します。
1. 安定型
安定型は、人との親密さを比較的受け入れやすく、必要なときには相手を頼ったり、自分から支えたりしやすい傾向を表します。
相手との距離が少し離れただけで関係そのものを強く不安視することも、人と近づくことを強く避けることも比較的少ない位置にあります。
後ほど説明する「不安」と「回避」という2つの軸で見ると、どちらも低い状態にあたります。
2. 不安型・とらわれ型
不安型は、親しい相手との関係で「嫌われたのではないか」「離れていくのではないか」といった不安が強くなりやすい傾向を表します。
相手からの反応や愛情を確認したい気持ちが強まり、関係のわずかな変化にも敏感になりやすいのが特徴です。
成人愛着の4分類では、これに近い位置を「とらわれ型」と呼ぶ研究があります。
不安型愛着については、不安がどのように恋愛や人間関係に現れるのかを別の記事で詳しく扱います。
この傾向は見捨てられ不安とも重なる部分がありますが、2つはまったく同じ概念ではありません。
3. 回避型・拒絶型
回避型は、人との親密さや、人に頼ることに距離を置きやすい傾向を表します。
不安やつらさを感じたときにも、自分の中で処理しようとしたり、人との距離を広げることで落ち着こうとしたりしやすくなります。
成人愛着の4分類では、不安が比較的低く、回避が高い位置を「拒絶型」と呼ぶ研究があります。
回避型愛着についても、人との距離の取り方や親密さへの反応を別の記事で詳しく扱います。
4. 恐れ型・恐れ回避型
恐れ型・恐れ回避型は、人と親密になりたい気持ちと、人と近づくことへの怖さの両方が強くなりやすい傾向を表します。
相手とのつながりを求めながら、拒絶されたり傷ついたりすることへの不安も強いため、近づきたい気持ちと距離を取りたい気持ちが同時に生じやすくなります。
「不安」と「回避」の2つの軸で見ると、どちらも高い位置にあたります。
研究や一般向けの解説によって「恐れ型」「恐れ・回避型」など名称には違いがあります。
愛着スタイルは必ず4つに分かれるの?
愛着スタイルというと「人間を4種類に分類する考え方」のように見えますが、成人の愛着研究には複数の捉え方があります。
4分類はその中の1つであり、研究によって使われる分類方法や名称も異なります。
1. 研究によって分類方法や名称が異なる
初期の成人愛着研究では、安定型・回避型・不安/両価型という3分類が使われました。
その後、成人の愛着を安定型・とらわれ型・拒絶型・恐れ型の4つに整理するモデルも提案されています。
そのため、「不安型」「とらわれ型」「回避型」「拒絶型」といった名称は、どの研究でもまったく同じ意味で統一されているわけではありません。
一般向けの記事では複数の研究モデルをわかりやすくまとめて「4つの愛着スタイル」と説明することも多く、そこで使われる名前にも違いが生まれています。
3分類と4分類のどちらか一方だけが正しいというより、愛着の個人差をどのような枠組みで整理するかが異なっています。
2. 不安と回避の強さで捉える研究も多い
成人の愛着は、いくつかのタイプに分ける方法だけでなく、「愛着不安」と「愛着回避」という2つの強さから捉える研究も広く行われています。
愛着不安は、相手から拒絶されたり見捨てられたりすることへの不安や、相手の愛情を確かめたい気持ちと関係する軸です。
愛着回避は、人と深く親密になることや、人に頼ることへの抵抗、心理的な距離を取りやすい傾向と関係する軸です。
この2つは「ある・ない」で分かれるものではなく、それぞれに強弱があります。
4つのタイプは、不安と回避の組み合わせをわかりやすく整理した地図として見ることもできます。
愛着スタイルが固定された性格とはいえない理由
「安定型」「不安型」「回避型」と名前がついていると、生まれつき決まった性格タイプのように感じられるかもしれません。
成人愛着の研究では、ある程度続きやすい傾向と、関係や時間によって変わる部分の両方が扱われています。
1. 同じ人でも関係する相手によって傾向が異なることがある
愛着の傾向は、誰と関係しているかによって同じ人の中でも違いが見られます。
ある相手とは安心して頼れるのに、別の相手との関係では強い不安を感じるという違いも研究されています。
たとえば、安定した反応が返ってくる関係と、相手の反応が予測しにくい関係では、同じ人でも不安の感じ方が変わります。
親、恋人、友人など、関係する相手ごとに愛着の傾向を測る研究も行われています。
そのため、愛着スタイルはその人のすべての人間関係にまったく同じ形で現れる性格分類とは性質が異なります。
2. 時間や経験によって傾向が変化することがある
愛着には一定の安定性が見られる一方で、生涯にわたってまったく変わらないものとして研究されているわけではありません。
人間関係の経験や、その時期に置かれている状況によって、不安や回避の強さが変化する可能性もあります。
そのため、ある時点で「不安型だった」「回避傾向が高かった」という結果が、その人の生涯を固定的に表すわけではありません。
インターネット上の簡易的な愛着スタイル診断も、自分の現在の傾向を考えるきっかけにはなりますが、1回の結果だけで固定されたタイプを決めるものではありません。
愛着スタイルと関連する心のしくみ
愛着スタイルは、人とのつながり方だけで独立して現れるものではありません。
見捨てられ不安や依存、境界線、感情調整など、ほかの心のしくみと重なる部分があります。
ここでは、混同しやすい概念との関係を4つに分けて整理します。
1. 見捨てられ不安との関係
見捨てられ不安は、「大切な人に離れられるのではないか」「見放されるのではないか」と感じる不安を指します。
愛着不安が強い人に見られやすい反応の1つで、相手の態度や連絡の変化に敏感になったり、愛情を確かめたくなったりする形で現れやすくなります。
一方、見捨てられ不安という言葉は愛着研究だけに限って使われるものではなく、さまざまな心理的背景の中で語られています。
そのため、見捨てられ不安があることだけで愛着スタイルを1つに決めることはできません。
2. 依存・共依存との違い
依存や共依存も、人との関係で生じる問題を説明するときによく使われる言葉です。
愛着スタイルが、親密な関係で安心をどのように求めるか、どの程度人との距離を取りやすいかという傾向を捉えるのに対し、依存は相手への頼り方や関係から離れにくくなる状態などを扱います。
恋愛の中で相手への依存が強くなる背景には、愛着だけでなく自己否定や孤独、不安など複数の要因が関係します。
恋愛で相手に依存する背景について扱った記事では、こうした違いをもう少し具体的に解説しています。
共依存では、相手を支えることや必要とされることが関係の中心になり、自分と相手の問題や責任が分かれにくくなる形も見られます。
境界線のない恋愛と共依存については、愛着スタイルとは別の関係性の問題として考える必要があります。
3. 境界線・自己概念との関係
境界線は、自分の感情や考え、責任と、相手のものとを分けるための心理的な境目です。
愛着不安が強いと、相手の反応が自分の安心感に大きく影響しやすくなり、愛着回避が強いと、人との距離を大きく取ることで自分を守ろうとする方向に傾く場合があります。
一方、境界線そのものは愛着スタイルとは別の概念であり、境界線の状態だけから愛着スタイルを判断することはできません。
自己概念も愛着と関係するテーマです。
人との関係を通して形成される「自分はどのような人間か」「他者からどのように扱われる存在か」という捉え方は、親密な関係で何を予測し、どこに不安を感じるかとも関係してきます。
4. 感情調整・トラウマとの関係
愛着スタイルは、不安やストレスを感じたときに感情をどのように調整するかとも関係しています。
愛着不安が強い場合は、相手とのつながりを強く求めることで不安を落ち着かせようとしやすく、愛着回避が強い場合は、感情や相手との距離を取ることで落ち着こうとしやすくなります。
こうした違いは感情調整の方法と重なる部分がありますが、感情調整そのものと愛着スタイルが同じ概念という意味ではありません。
トラウマ体験も愛着に影響を与える要因の1つとして研究されています。
一方で、不安型や回避型の傾向が見られることだけを理由に、過去にトラウマがあったと判断することはできません。
愛着スタイルは現在の人間関係の傾向を整理する枠組みであり、その背景には生育環境だけでなく、その後の人間関係やさまざまな経験も関わっています。
愛着スタイルは人との関わり方を読み解く一つの枠組み
この記事では愛着スタイルについて、定義や研究上の成り立ち、代表的な分類、固定された性格とはいえない理由、関連する心のしくみまで解説してきました。
愛着スタイルには3分類や4分類があり、現在の成人愛着研究では「不安」と「回避」という2つの強さから捉える方法も使われています。
安定型、不安型、回避型、恐れ回避型という名称は、人を4種類に分けるための絶対的な区分というより、親密な関係の中でどのような不安や距離の取り方が現れやすいかを整理するための枠組みです。
同じ人でも関係する相手や時期によって傾向には違いが生まれます。
愛着スタイルという言葉からわかるのは、人との関係に現れるパターンの一部であり、その人の性格や人生全体が1つの型だけで説明されるわけではありません。