
身近に「言い訳ばかりする人」がいると、気づかないうちに大きなストレスを抱えてしまいますよね。
責任を取らない上司、理由を並べるだけの部下、自分を正当化する友人や恋人──。
関係が近ければ近いほど、相手の言葉に疲れてしまう場面は少なくありません。
一方で、言い訳は単なる性格の問題ではなく、心理的な背景や過去の経験が影響していることがあります。
理解を深めることで、対応の仕方や距離の取り方も見えてきます。
この記事では「特徴」「心理」「過去の要因」「立場別の付き合い方」を整理し、心理学的な観点からも解説していきます。
Contents
言い訳ばかりする人の特徴
言い訳が多いという特徴のほかに、共通して見られる行動パターンがあります。
言い訳ばかりする人は、友人や恋人、家族など、あらゆる関係の中で出会う可能性がありますが、実際に私が運営している脳トレカレッジ(自己対話の学校)で寄せられるご相談の多くは、職場でのケースです。
上司や同僚、部下が言い訳ばかりで仕事が進まない
一緒にいるとやりにくい
正当に評価してもらえない
など、仕事に直結する悩みはやはり深刻になりやすいのです。
ここでは、そうした現場でも頻繁に見られる「言い訳ばかりする人」の代表的な行動を5つ整理してみましょう。
1. 責任を他人に転嫁する
最もわかりやすい特徴は「自分の責任を他人に押し付ける」ことです。
仕事でミスがあったときに
- 部下の説明が悪かった
- システムが古いから
- 上司の指示があいまいだった
など、必ず誰かのせいにしてしまう。
この態度が続くと、周囲は「結局この人は何も責任を取らない」と感じます。
小さなミスであれば許されることも、積み重なれば信頼は確実に失われます。
責任転嫁は一時的に本人を守る行動ですが、人間関係全体においてはマイナスに働くことが多いのです。
2. 自分を正当化する発言が多い
「私は悪くない」「これには正当な理由がある」と自己弁護を繰り返すのも典型的な特徴です。
たとえば期限に遅れたときに
他の人も遅れていたから大丈夫
体調が悪かったから仕方ない
と、必ず“正当な理由”をつけ足そうとする。
この行動は本人にとっては自尊心を守るためですが、周囲からは「素直さがない」「信用できない」と映ります。
結果として、対人関係がかえってこじれてしまうことも少なくありません。
3. 理由を聞かれると余計な言い訳が積み上がる
「なぜ遅れたの?」「どうしてこうなったの?」とシンプルに理由を尋ねられただけなのに、必要以上に言い訳を並べる人もいます。
電車が遅れて、その前に目覚ましが鳴らなくて、さらに昨日は夜遅くまで働いていて……
と、本来一言で済む説明が延々と続く。
本質的な答えが見えにくくなり、聞いている側は余計に疲れてしまいます。
これは「説明」ではなく「防御」になっているため、相手には誠実さよりも不信感を与えてしまうのです。
4. 論点をすり替える
指摘を受けた内容から話題をずらし、別の論点にすり替えるのも特徴的です。
たとえば「報告が遅い」と注意されたのに、
でも私の業務量は多すぎるんです
と返す。
言われていることとは別の話題に移してしまうのです。
これは直接責められることを避けるための行動ですが、周囲からすると「話をすり替えて逃げている」と見られがちです。
結果として、指摘する側の苛立ちを増やしてしまうことになります。
5. 被害者ポジションを取る
最後に多いのが「自分は責められている被害者だ」と振る舞うパターンです。
私は悪くないのに、こんなに叱られている
私状況が悪いだけで、自分は被害者だ
という立ち位置をとることで、相手に同情を引き出そうとする。
この態度は一時的に周囲の攻撃を和らげる効果はありますが、繰り返されると「いつも被害者ぶって逃げる人」というレッテルを貼られます。
中には
自分は大変なのに理解してもらえない
と逆ギレ気味になるケースもあり、関係がより複雑化する危険性もあります。
こうした特徴は一見バラバラに見えますが、共通しているのは「自分を守るための行動」だという点です。
責任転嫁や正当化、被害者ポジションはすべて、防衛反応として表に現れているにすぎません。
つまり、言い訳の多さは単なる性格ではなく、本人が置かれている心理的な状況を映し出しているともいえるのです。
言い訳ばかりする人の心理状態
では、言い訳ばかりする人の心理状態はどのようになっているのでしょうか。
言い訳は心理学的には「防衛機制(合理化や回避行動)」と呼ばれることがあります。
本人にとっては相手をだますための計算ではなく、無意識に働く心の防御反応です。
「責任を取れない」「素直に認められない」姿勢の裏側には、深い不安や恐れ、そして自分を守ろうとする強いエネルギーが隠れています。
ここでは代表的な5つの心理を整理してみましょう。
1. できない自分を認めたくない
失敗や未熟さを直視することは、自尊心を大きく揺るがします。
本当はできない。自分は劣っているかもしれない。
と感じることは、多くの人にとって非常に耐えがたいものです。
そのため、現実を受け止めるよりも「私のせいじゃない」「本当はできるけど条件が悪かっただけ」と言い訳するほうが楽に感じられるのです。
これは自分を守るための自然な反応ですが、繰り返されると成長の機会を逃し、周囲の信頼も失ってしまいます。
2. 責任を持ちたくない
責任を引き受けることは、自分の行動や結果を背負うことを意味します。
それが小さなことならまだしも、大きな失敗や損失につながる可能性を考えると、責任は重いものに感じられます。
この恐れから、「自分の責任ではない」と言い訳を重ね、負担を回避しようとするのです。
とくに過去に「責任を押し付けられて辛い思いをした」経験がある人ほど、この心理は強く働きやすくなります。
3. 人に嫌われたくない
「落ち度を認める=人に嫌われる」と思い込んでいる人も少なくありません。
ミスをしたら見捨てられる。弱さを見せたら価値がなくなる。
という不安があると、無意識に自分を正当化し、相手からの評価を守ろうとします。
これは幼少期の家庭環境や、いじめ・拒絶体験などに根を持つ場合もあります。
本人は嫌われることを恐れるあまり、逆に言い訳ばかりが目立ってしまい、関係性を悪化させてしまうのが皮肉なところです。
4. 怒られることに恐怖がある
過去に強く怒られた経験が心に残っていると、同じ状況を避けるために言い訳が先行します。
「また叱られるかもしれない」という恐怖が先立ち、事実を受け止めるよりも「自分は悪くない」と先回りして防御してしまうのです。
とくに職場や家庭など、上下関係がはっきりしている場ではこの心理が強まりやすい傾向にあります。
怒られることを避ける行動は自然ですが、結果的に相手との信頼関係を傷つけてしまいます。
5. 精神的に弱っている
言い訳の多さは、必ずしも性格だけではありません。
心のエネルギーが低下しているとき、人は「自分の非を認める余裕」がなくなるものです。
- 大切な人との別れ
- 過度なストレス心身の不調
精神的に疲弊しているときは、ほんの小さな指摘でも耐えきれず、言い訳という形で防御してしまいます。
普段は素直な人でも、疲れているときに限って言い訳が増えることがあるのは、このためです。
こうして見てみると、言い訳ばかりする人の裏側には「自分を守るための必死さ」が隠れていることがわかります。
その根本は怠け心ではなく、不安や恐怖、エネルギー不足といった心理的な背景です。
相手の行動を理解することで、単なる苛立ちから少し距離を取り、「なぜこの人はこうなるのか」と冷静に眺められるようになるでしょう。
言い訳ばかりする人をつくる背景(過去の要因)
ここまで「言い訳ばかりする人の特徴」や「心理状態」について見てきました。
では、そもそもどうして人は「言い訳ばかりする人」になってしまうのでしょうか。
生まれたばかりの子どもや、言葉を覚え始めた幼い子どもが、いきなり言い訳ばかりをする姿は想像しにくいですよね。
ということは、目の前で言い訳ばかりを繰り返すその人にも、必ず「そうなってしまった背景」があるのです。
もちろん、だからといって不快感や苛立ちが消えるわけではありません。
ですが
なるほど、こういう過程を経て今のその人が出来上がったんだ
と理解することで、ただ腹を立て続けるよりは、少し冷静な視点を持てるかもしれません。
それは相手を許すことではなく、自分自身のイライラから距離をとり、感情に飲み込まれにくくなるための視点です。
ここからは、言い訳ばかりする人がどのように形づくられていくのか──その代表的な背景要因を5つ見ていきましょう。
1. プライドを折られる経験がなかった
失敗や挫折を経験せずに育った場合、初めてつまずいたときにその現実を受け止められないことがあります。
自分はできるはずだ!
というプライドが強すぎて、現実と向き合う代わりに言い訳を選んでしまうのです。
成功体験ばかりを重ねてきた人ほど、「負けを認める」ことに耐性がなく、ちょっとしたミスでも大きな脅威として感じやすくなります。
2. 責任を押し付けられて嫌な思いをした
過去に「自分のせいではないことまで背負わされた」経験がある人は、責任そのものを強く恐れるようになります。
「責任=嫌なこと、損をすること」と学習してしまい、無意識に逃れようとするのです。
たとえば家庭や学校、職場で、誰かの失敗を理不尽に押し付けられた経験があると、後になっても「自分の責任を認めたら損をする」という思い込みが強く残ります。
3. いじめや育児放棄があった
「嫌われること」や「見捨てられること」への恐怖心は、幼少期の人間関係に深く根ざすことがあります。
いじめに遭ったり、親から十分に愛情を受けられなかったりすると、「自分の弱さや失敗を見せたら捨てられる」と信じてしまうのです。
その結果、関係を守るために言い訳を多用するようになり、無意識のうちに「嫌われないための防衛反応」として定着してしまいます。
4. DVやモラハラ被害を受けてきた
家庭内暴力やモラハラなどを受けて育った人は、他者からの指摘を「改善のための言葉」とは受け取れません。
過去の体験がトラウマとなり、「何を言われても攻撃されている」と感じてしまうのです。
そのため、防御反応として言い訳が先に立ちます。
これは相手を欺こうとしているのではなく、本人にとっては「攻撃から自分を守るための本能的な反応」なのです。
5. 精神的に搾取されて生きてきた
過去の人間関係の中で、常に我慢や犠牲を強いられてきた人は、心のエネルギーが慢性的に不足しています。
その状態では、素直に
自分が悪かった
と受け止める余裕が持てません。
エネルギー不足のまま生きていると、ほんの些細な指摘でも耐えきれず、言い訳という形で身を守るしかなくなるのです。
言い訳ばかりする人の背景には、必ず何らかの「過去の体験」があります。
それは本人にとっては防御のために選ばざるを得なかった道であり、性格の問題だけでは片付けられません。
相手の過去をすべて理解する必要はありませんが、「こうした背景があるかもしれない」と知っておくだけで、感情的に巻き込まれずに済む一歩になります。
立場別|言い訳ばかりする人との付き合い方
ここまで「言い訳ばかりする人」の特徴や心理状態、さらにはその背景についても整理してきました。
では実際に、あなたの身近に「言い訳ばかりする人」がいる場合──どのように付き合っていけばいいのでしょうか。
関係性によって適切な対応は大きく変わります。
上司や部下といった職場での関係、友人としての付き合い、恋人や家族といった親密な関係、それぞれに求められる姿勢は異なります。
ここでは、私がご相談を受ける中でも特に多い「上司・部下・友人・恋人・家族」という5つの立場に分けて、お困りごとが多い順に対応のポイントをご紹介します。
1. 上司:責任の境界線を引く
上司が言い訳ばかりするタイプだと、部下としては大きなストレスを感じやすいものです。
なぜなら、本来は上司が担うべき責任を、自分が巻き取らざるを得ないような状況になりやすいからです。
しかし、そこで「なんで上司が言い訳ばかりするのか」と怒りをぶつけても、関係性はこじれるだけ。
重要なのは、心の中で
ここから先は上司の責任
と境界線を引くことです。
上司の言い訳をすべて受け止めてしまうと、自分が過剰に背負い込み、疲弊してしまいます。
直接的に指摘しなくても、「これは上司が判断すべきこと」と心の中で線引きするだけで、精神的な負担は大きく減らせます。
2. 部下:理由ではなく解決策を考えさせる
部下が言い訳ばかりだと、仕事が進まなくて苛立ちやすいですよね。
どうしてこんなミスをしたの?
と理由を問い詰めると、延々と言い訳が積み上がるだけになってしまいます。
この場合に有効なのは、理由よりも「次の一手」に焦点を当てることです。
「じゃあどうすれば解決できるか」「次はどう防げるか」を考えさせることで、相手は責められる恐怖から解放され、建設的な行動に移りやすくなります。
理由を掘り下げるのではなく、未来に目を向けること。
これが「言い訳ばかりする部下」と付き合うときのポイントです。
3. 友人:言い訳をスルーして付き合う
友人関係では、相手を変えようとするよりも、自分の受け止め方を調整する方がラクになることが多いです。
言い訳ばかりで会話が噛み合わないと感じるときは、あえて聞き流す・反応しない、といった「スルー力」を使ってみましょう。
- 右から左へ受け流す
- 心の中で「また始まったな」と軽く受け止める
- 聞いているふりをして自分の気持ちを遠ざける
こうした態度を取ると、友人は「この人に言い訳しても効果がない」と学習し、次第にその振る舞いが減っていくこともあります。
友人関係は「距離を保ちながら続ける」か「付き合いを見直す」かを選べる関係。
無理に正そうとするより、自分の心を守る視点で付き合い方を工夫するとストレスが減ります。
4. 恋人:信頼関係を築くことに注力する
恋人が言い訳ばかりだと、イライラや不信感が募りやすいですが、ここは職場や友人とは違います。
これからも長く一緒に過ごす相手であれば、相手の背景や心理に理解を示し、信頼を深める方向にエネルギーを使うのが大切です。
相手がなぜ言い訳をするのか──その心理を理解しようとすることで、「この人は自分をわかってくれている」と感じ、言い訳が少しずつ減っていくこともあります。
ときには、過去のトラウマや不安を一緒に癒していくことで、唯一無二の存在になれる可能性もあります。
ただし、自分の心がすでに疲れているときは無理をしないこと。
「寄り添うことができる余裕があるとき」に取り組む、というバランス感覚も忘れないでください。
5. 家族:境界線を引き直す
家族との関係は、もっとも距離が近く、甘えや依存が出やすいため、言い訳ばかりされるとストレスは特に強くなります。
親や兄弟姉妹、あるいはパートナーとの関係において、相手の言い訳を受け止め続けるのは消耗が大きいものです。
その場合は、物理的に距離を取ることも選択肢に入れてみましょう。
一緒に暮らしているなら一時的に生活スペースを分ける、心理的に近すぎるなら意識的に関わりを減らすなど、境界線を引き直すことが有効です。
「家族だから我慢しなければならない」という思い込みを手放し、自分の心を守る距離感を調整すること。
これが、家族との関係でストレスを軽減するための大切な方法です。
言い訳は「回避行動」である
ここまで見てきたように、言い訳ばかりする人には特徴や心理的背景があり、その多くは「弱さ」や「恐れ」と結びついています。
つまり、言い訳とは「攻撃」ではなく「回避」。
自分を守るために無意識にとっている行動なのです。
この視点を持つだけで、相手の言い訳に対して過剰に反応しなくて済むようになります。
なんでこんなに言い訳ばかりするの?
と正面から苛立つのではなく
ああ、この人は今、恐れから逃げようとしているのかもしれない
と理解する。
そう思えれば、距離の取り方を調整しやすくなります。
もちろん、だからといって相手を全面的に許す必要はありません。
大切なのは「相手を変えること」ではなく「自分のストレスを最小限にすること」。
言い訳を“回避行動”と捉えることで、冷静さを取り戻し、自分にとって健全な人間関係のラインを引けるようになります。
まとめ|理解と距離感のバランスを持とう
言い訳ばかりする人の裏側には、心理的な不安や過去のトラウマが隠れています。
その背景を知ることで、「なぜこの人は言い訳ばかりなのか」と理解できる部分もあるでしょう。
ただし、だからといってそのすべてを背負い込む必要はありません。
大切なのは、理解しつつも自分の境界線を守ること。
そして、ときに距離を置きながら、自分の心を守ることです。
相手を変えることは難しくても、自分の反応や関わり方は選べます。
「理解」と「距離感」のバランスを持つことで、不必要に疲弊せず、より健全な人間関係を築くことができるのです。