
結婚したい気持ちはある。実際に婚活もしているし、いい出会いがあればちゃんと向き合おうとしている。
それなのに、なぜかいつも関係が続かない。真剣になった途端、うまくいかなくなる。
そんな“原因がよくわからない違和感”を抱えて、相談に来られる方が少なくありません。
実際、そうした方々の行動を見れば、結婚に向けて真剣に努力していることがよくわかります。
結婚相談所に登録したり、マッチングアプリを活用したり、実家から離れて暮らしていたり。
でも、「なぜかうまくいかない」「理由がよくわからない」という状態が続く。
そして、じっくり話を聞いて、深層にある心の背景を見ていくと、 そこには“親との関係性”や“親離れの問題”が、静かに横たわっていることが多いのです。
今回は、そんな背景にある「精神的な親離れ」について丁寧に紐解きながら、 恋愛や結婚を望む人にとっての“心の準備”として、どんな視点が必要なのかをご一緒に探っていきましょう。
Contents
親離れと結婚の関係性=結婚相談所スタッフの話
私はこれまで10年ほど、女性の恋愛・結婚にまつわるご相談をお受けしてきました。
あるとき、結婚相談所に勤める方からこんな話を聞いて、ハッとさせられたことがあります。
「条件も性格も申し分ない女性が、なぜか結婚まで進まないケースには“親との関係”が影響していることが多いんです。」
- 仮交際中のデートのたびに、「母がこう言ってたんですけど…」と親の意見を持ち出す
- 実家と離れることに不安を感じ、引っ越しに消極的になる
- 親の反応を気にして、真剣交際や成婚に踏み出せない
一見するとしっかり自立しているように見えても、心の深い部分で“精神的な親離れ”ができていない。もちろん、親子関係が悪いわけではありません。
でも、“親の価値観”と“自分の選択”の境界線が曖昧なままだと、いざというときに、自分でも説明のつかないブレーキがかかってしまうのです。
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そもそも“親離れ”ってどういうこと?3つの観点で考えてみよう
「親離れ」とひとくちに言っても、その中身は大きく3つの側面に分かれます。
この違いをきちんと理解していないと、たとえばカウンセラーに
親離れが課題かもしれませんね
と言われたときに、
え?私はちゃんと働いてるし、一人暮らしもしてますけど?
といった誤解が生まれてしまうこともあります。
今回特に取り上げたいのは、恋愛や結婚にもっとも深く影響を与える「③ 精神的な親離れ」。でもその前に、まずは3つの親離れの違いをしっかり確認しておきましょう。
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① 経済的な親離れ|お金を自分でまわす力
毎月の家賃や光熱費、食費を自分の収入でまかない、クレジットカードの管理や税金の支払いも自分で判断して動いている状態です。
「自分のお金で自分の暮らしを支える」ことは、見た目以上にエネルギーのいること。
でもその積み重ねが、「私は私で生きている」という実感を育ててくれます。
一人暮らしをして改めて「税金、高くない?!」なんて驚くこともありますよね…!
親の扶養から外れたあと、どこかで“誰にも頼らない強さ”と“自分で選べる自由さ”が生まれてくるのです。
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② 物理的な親離れ|生活力と距離の取り方
目覚まし時計で自分を起こし、洗濯機をまわしながら朝ごはんを用意する。郵便物を整理して、月末の支払いを済ませる──。
こうした“ごく普通の生活”を、自分ひとりの手でまわしていけることが、物理的な親離れの大きな一歩です。
節約のために自炊を試みたものの、食材を余らせて腐らせてしまう体験、あるあるではないでしょうか。
また、親と物理的に距離を置くことで、心理的な依存や無意識の気遣いにも気づきやすくなっていきます。
親と毎日顔を合わせる環境では見えなかった感情が、ようやく浮かび上がってくるのです。
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③ 精神的な親離れ|心の境界線を引く力
親の意見が頭をよぎるたびに、「それは私の望み? それとも親の声?」と立ち止まってみる。
精神的な親離れとは、“親の人生”と“自分の人生”に、見えない線を引くことから始まります。
どんなに愛されて育ったとしても、その愛が重く感じられることもあるし、期待に応えようとしすぎて、自分の本音が見えなくなっていることもある。
「私は私として、どう生きたい?」と問いかける力こそが、精神的な自立の土台になるのです。
ただ、①②と比較して“見えないもの”であるがゆえに、親離れの必要性を感じていないケースも多いです。
でも③こそが、恋愛・結婚にはダイレクトに影響を与えてくるのです。
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親離れができていない時に起こる恋愛・結婚トラブル
精神的な親離れができていないと、本当に不思議なんですが、次のような現象が恋愛や婚活の中で起きやすくなるんです。
ここで紹介する5つのケースは、すべて私が実際の相談現場で聞いてきたリアルな事例です。
特に厄介なのは、こういった方々が一見「全然問題なさそう」に見えること。
ちゃんと働いていて収入もあるし、身の回りのこともこなしているし、いわゆる“しっかりした人”に見える。
でも、精神的な親離れというのは本当に見えにくくて、その人自身も「なぜこれがうまくいかないのか」がわかっていないことが多いんです。
だからこそ、無意識(潜在意識)のレベルで小さなブレーキがかかってしまい、気づかないうちに恋愛や結婚に影響を及ぼしてしまう。
ここからは、そんな無自覚な影響が現れやすい5つの具体例をご紹介していきますね。
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① 結婚直前に将来の話がうやむやになる
これは本当に不思議なのですが、最初はむしろ男性側のほうが“結婚に乗り気”というケースも少なくありません。
1年以内に結婚したい!式はここがいいね!子どもは何人ほしい?
といった話をウキウキしながらしてくれて、まるで結婚に向かって一直線!というような雰囲気。
ところが、いざ女性側が「そうですね、そろそろ具体的に動きましょうか」と本気で前に進もうとすると、急に相手の様子がスン…と冷めてしまう。
仕事が忙しくなったり、急に転勤が決まったり、ご家族にご不幸があって「お祝い事どころじゃない」となったり。
まるで“何かに止められている”かのように、次々と「結婚に進めない理由」が現れ、話がうやむやになるパターンがあるのです。
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② 謎の婚約破棄をされる
出会いもあるし、交際も順調。婚約まで進んだ。
本人たちも、そして周囲も「このまま入籍かな」と思っていた──そんな流れが、なぜか急に止まることがあります。
たとえば、相手が「やっぱり考えたい」と言い出したり、はっきりとした理由を示さずに入籍の話を先延ばしにしたり。結果として、いつのまにか婚約が解消されてしまう。
これは「女性側に何か問題があった」というわかりやすい原因があるわけではなく、むしろその女性は魅力的で、性格的にも社会的にも安定していることがほとんど。
それでもなぜか、結婚という最終地点にはたどり着かない。
こうした“謎の婚約破棄”の背景に、無意識レベルでの“親との結びつき”が潜んでいることもあります。
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③ 自分の親が結婚に反対する
これは意外なことに、“仲良し親子”の間でも起こりがちです。
ふだんは何でも話せる関係で、むしろ親も彼のことを応援してくれているように見えたのに──
いざ結婚の話が出た途端
あの人って本当に大丈夫?
あなたにはもっといい人がいる気がするよ?
焦って決めなくてもいいんじゃない?
と、あからさまではないけれど絶妙に結婚を止めるような言葉が投げかけられたりします。
とくに多いのは、母親からのこうした“やんわりブレーキ”。
その背景には、「娘をまだ手放したくない」という無意識の感情や、母自身の結婚観・人生観が影響していることも少なくありません。
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④ 相手の親が結婚に反対する
これもまた、よくある“急転直下”のケースです。
交際中は彼のご両親とも仲良くしていて、週末には一緒に食事をしたり、ちょっとしたお土産を持って訪問したり──
このまま娘のように受け入れてもらえるのかな
いざ“結婚”という言葉が現実味を帯びた途端、相手の母親から「うちの家には入ってほしくない」「この結婚は認められない」と、まさかの拒絶が。
恋愛のあいだは「個人と個人」の関係だったのが、結婚になると突如「家と家」「家系と家系」の関係に切り替わる。
それにともなって、精神的な未分化や価値観の違いが、家族単位で表面化してくることもあるのです。
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⑤ 「結婚したいのか?」がわからなくなる
ここまでの1〜4のケースは、相手や親といった“外側”に現れるトラブルでした。
でもこの⑤は、もっと内側「自分の気持ちがわからなくなる」という現象です。
いわゆる“マリッジブルー”という言葉もありますが、それを超えて、まるで“マリッジ大混乱”。
私、本当に結婚したいんだっけ?
ていうか結婚ってなんだったんだっけ?
そんな問いが、ふと頭の中をぐるぐる回り出す。
未来が見えなくなったり、感情がついてこなかったり、自分の選択に確信が持てなくなったり。
そうなると、もう“婚約される側”ではなく“自分から破棄を検討する側”になることすらあります。
この混乱の背景にあるのが、“親の期待”と“自分の願い”の混線。
- 「親に認められたい」
- 「親に喜んでもらいたい」
- 「親が結婚して欲しそうだから」
という気持ちが、自分の本音を覆い隠してしまうと、
「私、誰のために結婚しようとしてたんだっけ?」と、心がふと立ち止まってしまうのです。
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精神的な親離れチェックリスト
実際の相談現場で、「この方、親との関係性が原因で無意識にブレーキがかかってるな」と感じることがあります。
ご本人はまったく自覚がないのに、心の奥では“精神的な親離れ”がうまくいっていないことで、結婚に踏み切れない状態になっている。
ここでは、そんな方々に共通する“見えにくい心理傾向”を5つ紹介します。いくつ当てはまるか、ぜひチェックしてみてくださいね。
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チェック① 常に親の顔が浮かぶ
今回は結婚をテーマにしていますが、これは実は進学・就職・転職・退職など、人生の節目すべてに関わる話。
自分の人生を自分で選び取るはずのタイミングで、「親がどう思うかな?」という考えが真っ先に浮かぶ。
これは、精神的な親離れがまだ十分にできていないサインかもしれません。
もちろん、親が病気だったり介護が必要だったりと、“現実的に気にかける事情”がある場合は別。
でも、まだまだ親も元気で、自分の人生も自由に選べるはずの状況なのに、何を決めるにも親の顔が浮かぶなら……
それは“心のハンドル”を、まだ自分で握れていない可能性があります。
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チェック② 親への恨み、わだかまりが大きい
これは、驚くほど多いケースです。
いわゆるアダルトチルドレンや、虐待・ネグレクトなどの背景がある場合もそうですが、もっと静かに深く、長年のわだかまりを抱えている人も少なくありません。
「愛していたからこそ、愛されなかったことがつらい」そんな気持ちが怒りに転化して、「なぜ私だけ?」という苦しさとして残っている。
まだその感情が自分の中で整理・消化できていないと、その強い感情が“心の癒着”として親にくっついたままになってしまう。
怒りでも、哀しみでも、執着でも、「まだ終わっていない感情」がある限り、精神的な親離れは難しくなってしまいます。
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チェック③ 親=役割と思っている
これも実は見落とされがちですが、大事なサインです。
子どもの頃は、「親=自分のお世話をしてくれる人」という見方をするのが自然です。“ごはんをつくってくれる人”“学校に送り出してくれる人”という、いわば“外注先”のような認識で親を捉えている。
けれど、大人になっていくにつれて、親も一人の人間なんだと理解し、自分の人生の中心から“役割としての親”を少しずつ手放していく必要があります。
にもかかわらず、いつまでも「親はこうあるべき」「親なんだから当然こうしてくれるべき」と思ってしまう場合、心の中で親を“役割部署”として保持し続けてしまっている。
これは、“精神的に自立できていない”状態を表す、わかりやすいサインでもあります。
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チェック④ 未熟な親を許せない
これはチェック③の“進化系”とも言えるかもしれません。
親という存在を「完璧な役割を果たしてくれる人」として見続けていると、その未熟さや欠点をなかなか受け入れることができません。
たとえば、親が年をとって足腰が弱くなったり、耳が遠くなったり──その自然な衰えすら、どこかで「そんなはずじゃない」と拒否したくなる。
あるいは、子ども時代に親自身がまだ若く、うまく愛情を注げなかったことに対して、「未熟だったから仕方ない」と思えず、「なぜちゃんと愛してくれなかったの?」という怒りが残っているケースもあります。
“親の人間性”よりも、“親という役割”を優先してしまうと、心の中でいつまでも「理想の親像」とのズレが埋まらない。
そうなると、精神的な親離れはなかなか進みにくくなってしまうのです。
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チェック⑤ 自分の決定について親の反応が気になる
これはチェック①とも少し似ていますが、こちらは「決断の瞬間」に限らず、“人生の選択そのもの”に深く影響するタイプです。
どこに住むか、どんな仕事をするか、誰と付き合うか──そういった場面で、「親がなんて言うかな」「がっかりしないかな」と、つい親の感情や評価が頭をよぎる。
ここでのポイントは、親が実際に何かを言ってくるかどうかではありません。親のリアクションを“先回りして想像し、気にしてしまう”という心のクセがあるかどうか。
これが無意識のうちに自分の選択を曇らせたり、行動にストップをかけてしまう要因になります。
つまり、“自分の人生のハンドル”を自分が握っているようで、まだ渡せていない状態なんです。
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精神的な親離れを進めるために、できること
では最後に、「じゃあ私はどうしたら親離れできるの?」と感じたあなたへ。
ここでは、シンプルだけれどとても大切な視点をお届けします。
私たちは、生まれた瞬間に“体”は親から切り離されて、ひとりの人間としてこの世界に立ちます。
でも“心”は、もっとずっと後になってから、ようやく本当の意味で親から離れていくものなのかもしれませんね。
精神的な親離れとは、「親を手放す」ことではなく、「親とは違う“私”として、この人生をどう生きたいか」を見つめ直すこと。
それは、自分を“再誕生”させていくようなプロセスでもあります。
- 「親の子ども」として生きるのではなく、「ひとりの人間」として自分を定義し直し、親と“大人同士”の関係性を築いていくこと。
- 親の声と自分の声をそっと分けて聴くこと。
- 「私はどうしたい?」「本当は何を望んでいた?」と、自分の本音を拾い直すこと。
- 誰かの期待に応えるためではなく、“自分の意志で”人生を選んでいくこと。
それが、あなたの人生をあなた自身の手に取り戻していく第一歩になります。
親と向き合うことは、同時に「私自身と出会い直す旅」でもあります。
このコラムが、そんな“新しい旅”の始まりに、そっと寄り添えたならうれしいです。