
「人生を立て直したい」──
そんな言葉がふと自分の頭に浮かぶとき、きっとあなたの人生は、ただ順調なだけの状態ではないはずです。
これまで積み上げてきたものが崩れてしまったり。
あるいは、積み上げてきた先で、急に違和感を感じたり。
これが正しい道だと思ってきたけど、もしかして違ったのかもしれない
そんな疑いが、自分の中にじんわりと広がってくることもあるでしょう。
ときには、
私は長いあいだ、大きな過ちを犯してきたのかもしれない
そんなふうに、自分のこれまでの人生すべてを、否定したくなるような衝動がやってくることもあるかもしれません。
人生を立て直す機会なんて、そう何度もあるものではありません。
もし今、そのタイミングに差し掛かっている方がいるなら──このコラムが
立て直したあとの人生のほうが最高だった!
と、心から言えるようになるヒントになれたら嬉しいです。
Contents
人生の立て直しは、こんなふうに始まる
私はこれまで10年以上にわたって、女性のパートナーシップや人生そのものに関するご相談を受けてきました。
そして年代によって「特に悩みやすいトピックス」は異なります。
たとえば、これから社会に出て自分の可能性を開いていこうとしている方たちは
どうすればうまく進めるか?
自分らしい道をどう選べばいいか?
といった、未来に向けた問いを多く抱えています。
立て直しというよりも「これからどうやって身を立てていくか?」が主軸です。
でも一方で、ある程度人生を積み重ねてきた方──社会的なポジションを手に入れ、自分という人間をある程度わかってきたという方のなかには、あるタイミングから、急に人生の展望が見えにくくなる人も少なくありません。
前と同じようにやっているのに、うまくいかない
何を頑張ればいいのか分からない
もしかして、私、長いあいだずっと間違った方向に進んでいたのかも
“人生を立て直したい”という言葉が浮かぶとき、ちょっと役立つTipsや前向きな言葉だけでは、もう足りない。
「自分とは何か」「私は何の上に立っているのか」
そうした根本的な問いに、もう一度向き合いたくなったとき、本当の意味で、“人生を立て直す”タイミングが訪れているのだと思うのです。
人生の立て直しは「建て直し」である
たとえば、「立て直す」という言葉。
漢字では「立て+直す」と書きますが、私はあえて「建て直す」と読んでみたいと思っています。
人生を立て直すというのは、たとえるなら、一軒家をリフォームするようなもの。
このイメージで捉えると、とてもわかりやすくなる気がするのです。
私たちはこれまで、自分なりに“人生という家”を建ててきました。
生まれ持った気質や才能を、成長の中で発揮したり抑え込んだりしながら、さまざまな経験を経て、考え方やスキルも身につけてきた。
そのすべてが成長の一部であることは確かです。
でも同時に、ときには「本来の自分とはかけ離れた現実」や「誰かの価値観」を、気づかないうちに取り込んでしまうこともあるのですよね。
たとえるなら、何度も増改築を繰り返してきた家のようなもの。
元々は純日本家屋だったはずなのに──親の希望で洋風アンティークなキッチンが増えていたり、
誰かの趣味でアラビアンな小部屋が建て増しされていたり、流行りだからと、和室の障子をなぜかステンドグラスにしてみたり。
そうして、最初はシンプルだったはずの家が、気づけば「これは一体どんな家なの?」と首をかしげたくなるような、ちぐはぐで落ち着かない空間になっている。
この家って、本当に私のだったっけ?
この先も、ここに住み続けるの…?
そんなふうに感じる瞬間に、まるで人生の方からそっと、
「ねぇ、そろそろ建て直そうか。あなた、もともとは純日本家屋だったじゃない?」
と語りかけられているように思うことがあるのです。
立て直しのサインとして現れる5つの変化
人生が「そろそろ見直してみない?」と語りかけてくるとき、それは唐突な「気づき」としてやってくるわけではありません。
むしろ、日常の中でじわじわと、あるいは予想もしていなかった形で、いくつかの“変化”として現れてきます。
ここでは、人生が立て直しを促してくるときに起こりやすい5つのサインをご紹介します。
① 突然の体調不良や予期せぬトラブル
急な病気や怪我、仕事上の思いがけないハプニング──
それまで順調だった日々に、突然ブレーキがかかることがあります。
いきなり動けなくなってしまったり、スケジュールが強制的に空いたり、「立ち止まらざるをえない」状況が生まれるとき、それは単なる不運ではなく、“今の流れをいったん見直してほしい”という人生からの合図かもしれません。
② 頑張りが報われなくなる
今まで通用していた方法や姿勢が、急にうまくいかなくなる。
努力しているのに結果が出ない、周囲との歯車が噛み合わなくなる──
そんな経験が重なっていくと、「もうどうしたらいいのか分からない」と感じてしまうことも。
これは、あなたがダメになったからではありません。
「これまで通り」では届かないステージに来ているということ。
つまり、やり方ではなく“在り方”そのものの見直しが必要なサインです。
③ 気力や意欲が急に消える
突然、何もしたくなくなる。好きだったことにも手が伸びない。
心がぽっかり空いたように感じたり、体が鉛のように重たくなったりする。
それは、怠けや甘えではありません。
これまでの自分を一生懸命保ってきたからこそ、限界がきているだけ。
「そろそろ、無理しない生き方に変えてもいいよ」という内側からの呼びかけかもしれません。
④ 人間関係の自然な変化
今まで親しかった人と距離ができたり、理由もないまま連絡を取らなくなったり。
反対に、急に縁が切れるような出来事が起きることもあります。
こうした変化は、最初はショックだったり、孤独に感じるかもしれません。
でも、“今のあなたにふさわしい関係性にシフトしていくためのプロセス”でもあるのです。
合わなくなった人との関係が静かに終わっていくのは、あなたが前に進んでいる証拠でもありますし、“終わり”に見せかけた再会への一歩のことも少なくないのです。
⑤ 理由のない涙や虚無感
感情が不安定になったり、ふと涙が出てきたり。
「なんで泣いてるのか分からない」「自分でも理由が分からないけど、つらい」──
そういう時期が訪れることもあります。
それは、あなたの深層が“もうこのままではいられない”と感じているから。
表面的には問題がなくても、「このままじゃない気がする」という静かな違和感が、立て直しのタイミングを知らせてくれているのかもしれません。
本来の自分以外のものが混ざると、人生は揺らぎやすくなる
これらのサインが現れると、多くの人はつい
私がダメだったのかな
やっぱり失敗しちゃったのかな
と、自分を責めてしまいがちです。
でも、もしかしたらそれは、「壊れた」からではなく「混ざりすぎた」からかもしれません。
人生という家には、意図しなくても、いろんなものが入ってきます。
親の価値観、世間の常識、身近な人の期待──それら一つひとつは悪いものではないけれど、無秩序に重なっていくと、
- 「何が大切だったのか」
- 「どこが私の中心だったのか」
- 「私の範囲はどこまでなのか」
がわからなくなってしまうのです。
私たちの人生そのものが、コラム冒頭で例に出したような
純日本家屋だったはずなのに、中華風の家具やステンドグラスが持ち込まれて、空間がちぐはぐになっているような状態──
そんなふうになってしまうと、心の深い部分では「この家、なんか落ち着かないな」
と感じ始めるのです。
それが、「人生を立て直したい」という気持ちの、静かなはじまり。
だからこそ、人生の方から
「リフォーム(建て直し)しませんか?」
というお誘いが来るのは、 むしろ自然なことと言えるでしょう。
いろんなものが混ざりすぎて、ちょっと居心地が悪くなってきたから「もっと心地よく整えていこうよ」という、優しいメッセージなのです。
あなたの人生を、もう一度“あなた仕様”に建て直していく。
そのプロセスこそが、「立て直す」ということの本質なのかもしれません。
立て直しを促す“混ざりすぎ”の原因5選
人生の中に「本来の自分とはちょっと違う何か」が混ざり込んでくることは、誰にでもあります。
気づかないうちに取り込んでいた“外からの要素”が積み重なると、「このままでいいんだっけ?」という違和感が静かに大きくなっていきます。
ここでは、その代表的な5つを見ていきましょう。
① 世間の“正解”
- 「いい学校を出て、安定した会社に就職する」
- 「30歳までに結婚して、子どもを持つ」
そんなふうに、世間には“幸せのテンプレート”のようなものが存在しています。
誰かが決めたその「正解」は、人生の指針になってくれる一方で、いつの間にかそれを“守ること自体が目的”になってしまうことも。
本来の願いとは別に、外側の評価や一般的な成功に縛られてしまうと、「私は何のために頑張っているんだろう?」と立ち止まる瞬間が訪れるのです。
② 親の期待
- 「いい子でいなさい」
- 「迷惑をかけないようにしなさい」
小さな頃にかけられた何気ない一言が、大人になっても心の奥に残っていることがあります。
親の期待に応えようとするのは自然なことですが、それがいつの間にか“親の人生を生きること”とすり替わってしまっていることも。
親が思い描く“理想の子ども像”と、本来の自分との間にギャップがあるとき、そのズレがじわじわと自己不一致を生み出します。
③ 身近な人の価値観
恋人、上司、友人、パートナー。
大切な人との関係の中で、「こう思われたい」「期待に応えたい」と願うのは自然なことです。
でも、相手の価値観をそのまま自分の中に取り込んでしまうと、気づけば“本音”がどこにあるのか分からなくなることがあります。
- 「本当はこうしたいけど、言いづらい」
- 「なんとなく相手に合わせてしまう」
そんな小さなズレの積み重ねが、自分の人生を“誰かに預けている感覚”をつくり出すのです。
④ 過去の自分の目標
かつての夢や目標は、たしかにそのときの自分を動かしてくれた原動力。
でも、時間が経って価値観が変わっても、「一度決めたことだから」と手放せないことがあります。
- 「昔は本気で目指してたけど、今はちょっと違う」
- 「あんなに欲しかったものを手に入れたのに…」
そんなふうに感じたとき、罪悪感を抱く必要はありません。
過去の自分が思い描いた“理想像”が、今の自分にとって窮屈になっているなら、それは“変化してきた証”であり、“成長のサイン”でもあるのです。
⑤ SNSで見る他人の暮らし
キラキラした誰かの投稿。おしゃれな部屋、充実した仕事、幸せそうな家族。
画面越しの映像は、つい“理想の人生”のように見えてしまうものです。
でも、それはほんの一瞬の切り取り。
誰にも見せない日常や、抱えている不安や迷いは、そこには映っていません。
それなのに、自分の“ありのまま”と他人の“ハイライト”を比べてしまうと、「なんで私はあんなふうになれないんだろう」と、自信が揺らいでしまいます。
SNSはあくまで参考程度に。そこに「本当の自分」はいません。
人生を立て直すための3つの視点
じゃあ、具体的にどうすればいいの?
人生を“もっと私らしく”立て直していくためには、焦らず、でも確実に、視点の持ち方を変えていくことが大切です。
ここでは、今のあなたができる3つのシンプルな視点をご紹介します。
どれも、“家をリフォームする”ように、人生を見直していく上でのヒントになります。
① 今の自分を俯瞰して見る
まずは一度、立ち止まってみましょう。
人生という家の“間取り”を、少し引いたところから見直してみるのです。
- どんな部屋がある?
- どこにモノが詰まりすぎていて、どこに風が通っていない?
- どこに違和感を覚えていて、どこに心地よさを感じている?
このとき大切なのは、「どうしてこうなったのか」を責める視点ではなく、「いま、何がどうなっているのか」をやわらかく見つめること。
まるで、誰かの家を内覧するように、好奇心と客観性をもって全体を眺めてみてください。
そうすると、いま自分が住んでいる“人生という空間”の中に、忘れかけていた本来の自分の輪郭が、少しずつ浮かび上がってきます。
② 何を残し、何を手放すか決める
次に、部屋の中を整えるフェーズです。
すべてを壊す必要はありません。
まるで、誰かの家を内覧するように、好奇心と客観性をもって全体を眺めてみてください。
でもその一方で「もう着なくなった服」や「思い出として置きっぱなしにしていた家具」「流行りに乗って作ったアラビアンな小部屋」のように、今のあなたにとってはもう役目を終えたものもあるかもしれません。
- 昔の夢
- 他人からの評価
- 「こうしなきゃ」と思い込んでいたルール
など、心の中にある“無意識のインテリア”たちです。
それらを「ダメだったから」ではなく、「ありがとう、もういいよ」とやさしく手放していくこと。
それが、スペースを空けて呼吸を取り戻す、第一歩になります。
③ 新しい選択で形を整える
最後に、あらためて“今の自分”で選び直すステップです。
リフォームが終わった部屋に、新しい家具を選ぶように、「これからの私」に合った在り方や行動を少しずつ取り入れていきます。
このときの合言葉は、「今までそうだったから」ではなく、「これから、どうしたいか」です。
過去にとらわれず、未来の正解探しにもとらわれず、“今ここ”の自分の感覚に合ったものを選び直すこと。
それこそが、人生を“私仕様”に再設計していくことにつながります。
まとめ|“立て直す”先に待っているのは、もっと私らしい人生
「人生を立て直す」とは、何かを終わらせることでも、過去を否定することでもありません。
それはきっと、“本来の私”と、もう一度つながり直すことだと私は思うのです。
どこかに置き忘れてきた、自分らしさという設計図を取り戻すプロセスとも言えます。
もし今、「もうダメかもしれない」「このままじゃ苦しい」と感じていたとしても、それは終わりではなく、「もっと心地よい空間をつくり直そう」という、人生からのサインかもしれません。
次に建てる空間は、これまでよりも、あたたかくて、風通しがよくて、何より“あなたの感性”にぴったりと合った家になるはずです。
人生の設計士は、いつだってあなた自身。
選び直すたびに、手放すたびに、整えるたびに──人生は、何度でも、もっと“あなたらしく”なっていきます。