
どうして私は、恋愛になると苦しくなるんだろう?
相手に大切にされていない気がするのに、嫌われるのが怖くて離れられない
そんな恋愛を繰り返してしまうのは、あなたの“性格が悪い”からでも、“人を見る目がない”からでもありません。
もしかしたら、それは自己肯定感の低さ──もっと言えば、傷ついた心を守ろうとする“自己防衛”が、恋愛という形で現れているだけなのかもしれません。
このコラムでは、「自己肯定感が低い人の恋愛・人間関係で起きやすいすれ違い」と、「無理に高めようとしなくても自然と高まってしまう方法」について、心の構造からやさしく解説していきます。
Contents
自己肯定感が低い人に共通する“心のクセ”とは?
自己肯定感が低いとき、人の内側ではどんなことが起きているのでしょうか?
恋愛や人間関係に出てくる“すれ違い”の前に、実はもっと深いところで、 次のような“心のクセ”が静かに働いています。
頭の中でずっと、自分を否定している
私ってほんとダメ。
なんでこんなこともできないんだろう。
そんなセルフトークが、無意識にぐるぐると流れていませんか?
“自己肯定感が低い状態”とは、自分が自分の一番の批判者になっている状態なのです。
褒められても、素直に受け取れない
たまたまでしょ?
お世辞だよね。
と、好意や評価を受け取れない。
それは、“自分の価値”と現実の評価が一致していないから。
受け取るより、否定する方が“安心”に感じてしまうのは、防衛反応でもあります。
自分よりも、他人の目を優先してしまう
「どう思われるか」が気になりすぎて、自分の気持ちがわからなくなる。
“他者の評価”が、自分の存在価値の基準になっているとき、 人は他人に合わせてばかりになり、本当の自分が見えなくなっていきます。
些細な失敗で、自分を全否定してしまう
ちょっとミスしただけで、「だから私はダメなんだ」とすべてを否定してしまう。
自己肯定感が低いと、「できた/できなかった」が「価値がある/ない」に直結してしまいがち。
だから完璧主義になったり、挑戦が怖くなったりもします。
「本当の自分」を自分が知らない感覚
本当はどうしたいの?
あなたは将来どんな人になりたいの?
そう聞かれても、何も出てこない。 それは、ずっと他人の期待に合わせて生きてきた“自己不在”のサイン。
自己肯定感の低さは、“自分という存在の不在感”としてもあらわれるのです。
自己肯定感が低いまま恋愛をすると、こんな“すれ違い”が起きる
こうした“心のクセ”があるまま恋愛に入ると、どんなことが起こるのでしょうか?
実際に、私が過去10年間いただいてきたご相談の中でも、自己肯定感の低さが原因で、恋愛が苦しくなってしまったケースは本当に多いと感じています。
「ちゃんと愛されたい」「大切にされたい」と思っているのに、 なぜか逆の方向に進んでしまう恋。 うまくいかせたくてがんばっているのに、どこかですれ違ってしまう関係。
の根っこには、「私は愛されるに値する存在だ」という土台の弱さ、つまり自己肯定感の揺らぎがあるのです。
彼との関係が“上下”になってしまう
自己肯定感が低いと、自分に自信が持てず、「私なんて…」と無意識に自分を下のポジションに置いてしまいがちです。
その結果、相手の発言や態度がすべて“上から”に見えてしまったり、「私が我慢すればいい」と自分を抑えてしまったりして、気づけば上下関係のような恋愛になってしまうことに。
本当は“横並び”で愛し合いたいのに、自分の方が劣っているように感じて、対等な関係を築くことが難しくなってしまうのです。
「自分を肯定してくれる人」を彼に求めすぎてしまう
自己肯定感が低い人ほど
彼が好きって言ってくれる。
必要だって言ってくれる。
その言葉でしか自分の価値を感じられなくなってしまうことがあります。
その状態になると、恋愛の目的が「愛すること」ではなく、「肯定されること」にすり替わってしまい、彼にとってもプレッシャーになってしまうことも。
愛されたい気持ちが強すぎて、彼を“自分の自己肯定係”にしてしまうと、関係が重く、しんどくなってしまうのです。
「選ばれる側」になりすぎて、雑な扱いを許してしまう
恋愛は、本来「選び合う」もの。
でも、自己肯定感が低いと、「私なんかを選んでくれるだけでありがたい」という思考になりやすく、気づけば“選ばれる側”に固定されてしまいます。
その結果、どんなにモヤモヤしても我慢したり、相手の言動に傷ついても「しょうがないか」と自分に言い聞かせたり。
対等であることをあきらめてしまう関係になってしまいやすいのです。
「この人がいないとダメ」と思い込み、執着してしまう
彼がいないと私なんて…
この人に愛されないなら、もう生きてる意味がない
そんなふうに、自分の存在価値すら“相手ありき”で考えてしまう状態は、とても苦しく、そして不安定です。
自己肯定感が低いと、自分だけで「私には価値がある」と感じにくくなるため、相手に価値判断をゆだねてしまい、執着が強くなっていくのです。
安心していても、不安が勝ってしまう
彼がどれだけ優しくしてくれても、「本当に好きなのかな?」「いつか離れていくんじゃないかな?」と、不安が先に立ってしまう。
これは、過去の経験や心の傷が、“今の愛”をまっすぐに受け取るのを邪魔している状態です。
「愛される価値がある私」という感覚が育っていないと、安心できるはずの関係にも、どこかで不信感や恐れが混ざってしまうのです。
この5つのパターンは、どれかひとつでも思い当たるなら、 それはあなたが“愛し方”がわからないのではなく、“愛される準備”が整っていないだけかもしれません。
焦らなくても大丈夫。 ここからは、無理に“高める”のではなく、自然と自己肯定感が回復していくステップをお伝えします。
自己肯定感って、「高めるもの」じゃないんです
「自己肯定感を高めましょう」
「自己肯定感をアップさせることが成功の秘訣です」
そんな言葉を、どこかで耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
自己肯定感が高まると、恋愛も仕事も人生もうまくいく。
だからこそ、「こうすれば自己肯定感が高まりますよ」といった実践的な方法が、書籍やネット上にも数多く紹介されています。
・鏡の前でポジティブな言葉をかけてみる
・できたことをノートに書き出してみる
・頼る・甘える練習をしてみる
どれも、決して悪いことではありません。
実際に、私自身も過去に取り組んでみたことがありますし、 これまでお会いしてきた多くの相談者の方々も、 「これで変われるはず」と信じて、真面目に実践されていました。
けれど、こんな声もまた、とても多いのです。
- 「がんばってるのに、うまくいかない」
- 「一瞬よくなった気がするけど、すぐ元に戻ってしまう」
- 「むしろ疲れてしまった」
そのとき、私の中に浮かんだのが、こんなイメージでした。
穴の空いたバケツに、一生懸命“いい水”を注いでいるような感覚、あるいは、栄養たっぷりのサプリメントを飲んでいるのに、身体が吸収できていないような感じ。
そして私がたどり着いたのは、こうした結論でした。
自己肯定感とは、「高めよう」として高まるものではない。
ふと気づいたときに、「あ、前より自分のことを責めていないかも」と感じるような、“結果”として立ち上がってくるものなのだということ。
もし今、「私は自己肯定感が低いから、高めなきゃ」と思って、意欲的にいろんな方法を試してきたのに、なぜかうまくいかない。
むしろ苦しくなってしまう──そんな感覚があるのだとしたら。
それは、あなたが努力をしていないからではありません。
自己肯定感とは、“高めるために頑張るもの”ではなく、“気づけば高まっていた”という性質を持ったものだからなのです。
では、どうすれば自然と高まっていくのか?
次に、“がんばらなくても自己肯定感が育っていくための3つのステップ”をご紹介していきます。
自己肯定感が“勝手に高まってしまう”ためのやさしい3ステップ
ここまでお伝えしてきたように、自己肯定感というのは「高めよう」として高められるものではありません。
にもかかわらず、私たちはそれを何とかしようと、「効果がある」と言われる方法を一生懸命試してしまいます。
でも、先ほどの段落でご紹介したように、どんなに栄養価の高いサプリメントでも、身体が疲れきっていて吸収できなければ、ただ排出されてしまいます。
つまりどんなに素晴らしい自己肯定の言葉も、心の器に穴が開いたままでは、ジャージャーと流れ落ちてしまうのです。
だからまずは、自己肯定感そのものを“注ぐ”ことよりも、器を整えることから始めていきましょう。
以下の3ステップは、そのための“やさしい処方箋”です。
ステップ1|今、どんな気持ち?と、自分に問いかけてみる
これはいわば、「バケツの穴を塞ぐ試み」の第一歩です。
自己肯定感が低いとき、人は自分の感情にフタをしてしまいがちです。
でもまずは、“今ここ”の自分にそっと意識を向けてみてください。
- 「暑いな」
- 「お腹すいたな」
- 「なんかイライラしてる」
- 「眠い」
- 「ちょっと頑張りたいかも」
- 「悲しい…」
そんな、ごく日常的で小さな感覚に気づいていくこと。
いきなり自分に対して
あなたの人生の目的は?10年後どうなってたいの?!
結婚したいの?したくないの?どっち?
といった大きな問いを投げる必要はありません。
ただ、「今、私はどんな気持ち?」と、自分との対話を始めてみるだけでいいのです。
この“小さな気づき”を重ねていくことが、心の器の穴を少しずつふさいでいく作業になります。
ステップ2|自分を肯定してくれる人に、思い切って甘えてみる
自己肯定感が低いということは、「自分で自分を肯定する力がまだ育っていない」という状態です。
これは英語が話せない人に、「はい、じゃあスピーチして」と求めるようなものです。
ですから、自分で自分を肯定できないうちは、“他者からの肯定”を戦略的に受け取ることが、とても大切になります。
家族、恋人、友人、職場の信頼できる人──誰でも構いません。
あなたのことを「そのままでいいよ」と言ってくれる人に、遠慮せず甘えてみてください。
もし身近にそういう人がいなければ、カウンセラーでも、コーチでも、推しでも構いません。
あなたの価値を認めてくれる存在から、堂々と“肯定のシャワー”を浴びてほしいのです。
ここで大切なのは、これは「仕方なく」他人に頼るんじゃない、ということ。
“戦略”として、足りないものを他者から補っている──その自覚を持ってほしいのです。
例えるなら、まだ穴の空いているバケツに対して、「1時間に10ミリ漏れるなら、それ以上の水を注げばいい」みたいなことです。
漏れる量よりも、圧倒的に多い量を、溢れるくらい注げばいいのです。
あなたが失い続けてきた肯定を、ここで取り戻すチャンスにしてください。
ステップ3|小さな安心を、自分に与える習慣をつくる
他者からの肯定を借りてバケツの穴を塞ぎながら、最後は少しずつ自分自身で「安心」を育てていくフェーズです。
・うまくできた日に「よくがんばったね」と声をかける
・ちょっと疲れている日に「今日は早めに休もう」と自分に許可を出す
・人と比べそうになったとき、「私は私」と思い出す
どれも些細なことかもしれませんが、日々の中で“自分の味方でいてあげること”が、やがて揺るがない土台をつくっていきます。
そしていつか、「あれ?前より自分を責めてないかも」「昔より安心して恋愛できてるかも」──
そんなふうに気づいたとき、自己肯定感はすでにあなたの中で“育っていた”ことになるのです。
まとめ|“自分を好きになる”より、“自分の味方になる”ことから
自己肯定感が低いことを、どうか責めないでください。
それはあなたが、ずっと誰かに嫌われないように、傷つかないようにと、自分を守って生きてきた証です。
がんばって、合わせて、我慢して──そうして築いてきた“優しさ”が、今は少しだけ自分に向けられずにいるだけなのかもしれません。
無理にポジティブにならなくてもいい。
すぐに自分を好きになれなくても、大丈夫。
まずはただ
私は、今日の私の味方になれているかな?」
そんな問いを、そっと胸に置いてみてください。
自己肯定感は、その問いかけの中で、いつのまにか、ゆっくりと育っていくものですよ。