
恋をすると、もっと近づきたくなる。
片思いでも、両思いでも「もっと心を重ねたい」「できることなら一つになりたい」そう思ってしまうこと、ありませんか?
あまりに好きすぎて「この身体なんてなければ、溶け合って一つになれるのに…」 そんなふうに感じたことがある人も、いるかもしれません。
でも、そうやって“私とあなたの境界”があいまいになっていくと、 恋愛関係は意外としんどくなりやすいです。
今回のコラムでは「相手と近づきすぎることでの弊害」について、心の境界線の大事さと共に見ていきましょう。
Contents
「心の境界線」ってそもそも何?恋愛との関係とは
「私は私」「あなたはあなた」という感覚を、ちゃんと持てているかどうか。
これは恋愛に限らず、人間関係全般でとても大切なことなんですが、 とくに恋愛では、この境目があやふやになりやすいものです。
相手にもっと近づきたい!
私のことをもっと知ってほしい!
もはや1つになりたい!
そんな気持ちが強くなりすぎると、いつの間にか自分の感覚やスペースを手放してしまうことがあります。
するとどうなるか?
冒頭でお伝えしたような
- いつも彼の都合が優先で、私は振り回されてばかり
- SNSをチェックしては、モヤモヤしてしまう
- 相手の機嫌に引っ張られてしまう
そんな、決定的ではないけど、確実に“快適ではない”恋愛に陥りやすくなってしまいます。
アドラー心理学「課題の分離」にヒントがある
境界線って言われても、いまいちピンとこないな…
そんな方は、アドラー心理学の考え方をひとつのヒントにしてみると分かりやすいかもしれません。
とくに有名なのが「課題の分離」という考え方。
これは、「それって誰の問題?」を見極めて、 自分が背負わなくていいものは、ちゃんと手放していこうという考え方です。
たとえば──
- 彼が機嫌が悪いのは、彼の課題
- 自分の愛情が伝わらないのは、相手の受け取り方の課題
- でも、自分がどう感じたか、どう関わるかは、自分の課題
つながっているようで、実はきちんと分けられる。
この「課題の分離」の感覚は、そのまま“心のパーソナルスペース=境界線”にも重なります。
どんなに近い関係であっても、 「ここから先は、相手の領域」 「これは、私の感じ方・選び方」 そうやって、お互いの間にやわらかく線を引く。
それが結果的に、心の自由と安心を守ることにもつながっていくのです。
境界線の基本構造|壁は2枚、間には“廊下”
どんなに愛しい相手との間でも いや、むしろ愛しい相手との間だからこそ、ちゃんと境界線を引くことが大切です。
でも、「境界線」という言葉を聞くと、 多くの人がイメージするのは
私と相手の間に一本だけ線が引いてある。
ような状態ではないでしょうか。
でも本来、健やかな人間関係に必要な“心の境界線”とは 「線が2本」ある状態を指します。
あなたと誰かがいて、その間にただ一本の線が引かれているのではなく、 あなた側の白線と、相手側の白線が1本ずつ、計2本ある。
たとえるなら、お互いに「自分の部屋」を持っていてその部屋と部屋のあいだを、“廊下”がゆるやかにつないでいるようなイメージです。
この「自分の部屋」と「廊下」を持っている状態こそ、健全で心地よい関係性の基本形です。
だけど、この境界線がうまく機能していないと──
- 線が1本しかない
- そもそも境界が存在しない
- 相手の部屋に土足で踏み込む
- 自分の部屋を相手に明け渡してしまう
このような状態になってしまうことがあり、そしてこの状態こそがしんどさや違和感の正体なのです。
心の境界線が崩れる3つのパターン
ではここからは、実際に“心の境界線”がうまく引けなくなってしまったとき、 恋愛の中でどんなことが起こりやすいのか?
よくある3つのパターンに分けて見ていきましょう。
恋愛の中で「しんどい」「苦しい」と感じる人の多くは、 この3つのどれか、あるいは複数がミックスされた状態になっています。
今日紹介するのは3つのタイプです。
Aパターン|自分の線を消してしまうタイプ
Bパターン|相手の線を壊そうとするタイプ
Cパターン|お互いの線が存在しない“境界ゼロ”タイプ
これ、昔の私だ…
今の恋愛、まさにこれかも
そんなふうに感じたら、ぜひその感覚を無視せず、そっと向き合ってみてください。
恋愛のしんどさは、あなたの心が「ちょっと待って」とサインを送ってくれている証拠です。
ここからは、A→B→Cの順に、それぞれのパターンとその背景、起こりやすいモヤモヤについて、詳しくご紹介していきますね。
① Aパターン|自分の線を消してしまう“自己犠牲型”
最初にご紹介するのは、自分側の境界線を消してしまうタイプ。
恋愛で心の距離が近づくほどに、 反射的に「自分のスペース」をどんどん手放してしまいやすいタイプです。
- 彼から連絡が来たとき、すぐに会えるよう予定を空けておく
- 深夜の呼び出しに応じられるように、メイクを落とさず待っている
- まだ関係が浅いのに、自分の家の合鍵を渡してしまう
どれも一見、相手への“思いやり”や“愛情”のように見えるかもしれません。
でもその裏で、「私はどうしたい?」という感覚がどんどん薄れていってしまっていること、ありませんか?
このタイプの人は、自分では「合わせてあげている」つもりでも、気づけば「都合のいい存在」になってしまっていることが少なくありません。
そしてその背景には、“自分の線だけが消えている”という構造があります。
彼には彼の白線がある(=ちゃんと自分の領域を保っている)
でも、自分側の白線だけが見えなくなっている(=自分の領域が消えている)
そうなると、「彼の境界線はあるのに、自分の境界線はない」状態になり、自然とその差に違和感や寂しさを感じやすくなってしまうのです。
この構造が起こりやすいのは
- ハイスペックな彼や、仕事が多忙な男性とお付き合いしている女性
- 「好きになってくれる人より、好きになった人に尽くしてしまう」タイプ
- 「私が空けていれば、愛されるはず」と思いがちな人
こんな人たちに多く見られます。
🔸セルフチェックしてみよう:あなたはAタイプかも?
- 「なんで私ばっかり頑張ってる気がする…」と感じる
- 彼の予定に合わせすぎて、自分の時間が減っている
- 何かを断ることに、強い罪悪感がある
どれか1つでも当てはまったら、あなたの白線が薄れているサインかもしれません。
② Bパターン|相手の線を壊そうとする“侵入型”
次にご紹介するのは、自分の線はしっかり保ったまま、相手の境界線を壊そうとしてしまうタイプです。
このタイプの人は、自分の感情やスペースは守りながら、相手にだけは「もっと近づいてよ」「全部見せてよ」と強く求めてしまう傾向があります。
- SNSをくまなくチェックして、元カノや女性の影を探す
- 彼の言動にいちいち敏感になって、「誰といたの?」と詰める
- 仲良さそうな女性に過剰に反応して、嫉妬や不安をぶつける
- ときにはリアルに探偵を使って、彼の行動を把握しようとする
そんなふうに、相手の“白線”の中に土足で踏み込もうとしてしまうことがあるのが、このBパターンです。
そして、彼が
俺の線、消すなよ!
と反発してきたとき
そんなこと許さない!遠隔射撃で線を消してやる!
……そんな勢いで、相手の境界線を壊そうとしてしまうんです。
このときの構造はこう。
自分の白線:しっかり引かれている
相手の白線:消そうとしている
一見、「私はすごく心を開いてるのに、彼は閉じてる!」と感じるかもしれません。
でも実際には、“開いてるようで、開いていない”ケースが多いのです。
たとえば
- 自分は不安や怖さを隠したまま相手にだけ「本音を見せて」と迫る
- 自分は安全圏にいながら、相手だけを丸裸にしようとする
つまりこれは、信頼ではなく、“情報による安心感”を求めている状態とも言えます。
🔸セルフチェックしてみよう:あなたはBタイプかも?
- 「なんで私ばっかり見せてるのに、彼は見せてくれない」と思う
- 彼のSNSや元カノ情報を定期的にチェックしてしまう
- 「本音で向き合いたい」と言いながら、自分の本音はあまり出していない
ひとつでも当てはまったなら、
安心したい気持ちが強すぎて、相手の線を壊そうとしていないか?
そっと自分に問いかけてみてください。
③ Cパターン|お互いの線がない“共依存型”
最後にご紹介するのは自分にも、相手にも、境界線(白線)が存在しないタイプです。
Aパターンは「自分の線だけを消した」
Bパターンは「相手の線だけを壊そうとした」
でもこのCパターンはふたりともが、自分の線をシャシャッと消してしまった状態。
たとえば、女性が
もっと繋がりたい!
という気持ちから、自分の線を足でこすって消してしまう。
すると、相手もそれに呼応して
じゃあ俺も、線なんていらないや
と、自分の線を消してしまう。
こうして、気づけばふたりとも“白線なし”の空間に立っている。
感情も、予定も、考えも、全部が混ざり合ってしまって、「どこまでが私で、どこからがあなたか」がわからない。
まるで“一心同体ごっこ”のような状態です。
一見すると、すごくラブラブで仲が良いように見えるかもしれません。
なんでも話せて、毎日一緒にいて、好きが止まらなくて、心が完全に通じ合っているような感覚。
ですが、この状況は無自覚のうちに“共依存”という構造になっていることも少なくありません。
共依存の関係では、相手の感情や反応が、自分の心の軸そのものになってしまいます。
- 相手の機嫌ひとつで、自分のテンションが変わる
- 相手の行動で、自分の存在価値を左右される
- 相手がそばにいないと、自分が空っぽに感じてしまう
そんなふうに、自分の内側が「他人の反応」で決まってしまうのが、このCパターンの特徴です。
最初は恋の高揚感が、ずっと続くような気がしてとても気持ちがいいのですが、境界ゼロの関係は「、崩れたときのダメージがとても大きい。
一心同体だと思ってたのに、どうして置いていくの…?
私、あなたがいないと何もできないのに…
そんなふうに、“恋愛の終わり”が自己の崩壊に直結してしまうこともあります。
🔸セルフチェックしてみよう:あなたはCタイプかも?
- 恋愛中、気づいたら“自分のやりたいこと”がなくなっていた
- 相手の言葉や態度に、一喜一憂が激しい
- 恋愛が終わると「自分って何だっけ?」と思ってしまう
どれかに当てはまるなら、
あなたの心の輪郭が、恋愛の中で曖昧になってしまっているのかもしれません。
心の境界線を引くために、できる3つのこと
ここまで読んで、「私、まさにAかも…」「前の恋愛がCパターンだったかも」と思った方もいるかもしれません。
でも大丈夫。
境界線が一度崩れていたとしても、もう一度、引き直すことはできます。
しかもそれは、「相手に言うこと」よりも、「自分との関係を整えること」から始まります。
ここでは、今日から少しずつ実践できる3つの視点をご紹介します。
① 自分の感情と行動を、分けて考える
まずひとつ目は、「自分の感情」と「そのあとの行動」を、ちゃんと分けてあげること。
たとえば「彼に会いたい」と思うのは自然な感情です。
でも、「だから今すぐLINEしなきゃ」は、行動の選択です。
この“感情”と“行動”の間にスペースがあるのが健康的な状態なのですが、相手と自分の境界線が曖昧な人ほど「自分の中の感情と行動の境界線」も曖昧だったりします。
だからまずは、「そう感じたんだね」と湧いてきた感情にOKを出した上で、感情と行動を直接繋げない(境界線を設ける)ところからトレーニングを始めてみてください。
② 相手の機嫌と自分の価値を、切り離す
さっき既読スルーされたの、私が何かしたからかな?
急に冷たくなった…嫌われたのかもしれない
そんなふうに、相手のちょっとした態度や反応に、心が振り回されてしまうことはありませんか?
でも、それは本当にあなたの価値に関係しているでしょうか?
- 相手の機嫌は、相手のコンディションの結果かもしれない
- 忙しかっただけかもしれない
- ただただ“今はそういう時期”なだけかもしれない
大事なのは、「私はどうしたい?」「私はどう感じた?」と、自分に返ってくる感覚を持つこと。
あなたの価値は、誰かの表情や言葉で、決まるものではありません。
③ 「認めること」と「同意すること」を、分けてみる
相手とコミュニケーションする中で、自分と相手の意見や考えが違うこともよくありますよね。
そんな時、相手のことが好きなほど「相手の意見や考えが自分と異なっても、同意してしまう」選択をしがちです。
で、「認めること」と「同意すること」は、まったく別のことなんです。
- 認める:相手の考えを「あなたはそうなのね」と認識する
- 同意する:自分と異なる相手の考えを全面的に支持する
相手に嫌われたくなくて、つい自分の意見や希望を押し込めてしまうと、だんだん「私は何がしたかったんだっけ?」と分からなくなっていきます。
少しずつでもいいので“認めること”と“同意すること”を分ける練習をしていきましょう。
まとめ|恋愛がしんどいのは“心の境界線”があいまいだったから
恋愛がうまくいかないとき、多くの人は「もっと頑張らなきゃ」「私が変わらなきゃ」と、自分を責めてしまいます。
でも、本当に必要なのは「我慢すること」でも「相手を変えること」でもなくて、自分の“白線”を、もう一度ちゃんと引いてあげることなのかもしれません。
今回お伝えした、境界線が崩れる3つのパターン
Aタイプ:自分の線を消してしまう自己犠牲型
Bタイプ:相手の線を壊そうとする侵入型
Cタイプ:お互いの線がない共依存型
どれも、根っこにあるのは「もっと繋がりたい」「分かり合いたい」という、まっすぐな気持ちです。
だからこそ、その気持ちごと否定する必要はありません。
むしろ、その気持ちを大切にしたまま、「自分の輪郭」を取り戻すことが、健やかな恋愛の土台になっていきます。
これが私の気持ち
ここから先は、相手の領域
私は私、あなたはあなた。でも、つながっていたい
そんなふうに、分かれたうえで、出会い直せる関係は、とても心地よくてあたたかいものです。
あなたがあなたとして、安心して立っていられる場所。その上で、誰かとつながっていける恋愛。
それが、ほんとうの意味で“幸せな関係性”なのかもしれません。
さて、あなたは今回の3タイプのうち、どのパターンに近かったでしょうか?
- 私はAタイプだったな。
- Bタイプで相手の線を破壊してた!
- 昔の彼との関係、Cっぽいかも。
そんな気づきがあった方は、ぜひ自分と相手の境界線を引き直してみてくださいね。
不思議なことに、適切な境界線を引くことで、むしろ今までよりもっと深く繋がった感覚になれると思います。