
本当の自分って、いったい何だろう?」
きっと誰もが一度は考えたことがあるテーマだと思います。
よく自己啓発やスピリチュアルの世界では「子どもの頃の自分が本当の自分だ」と言われます。
でも振り返ってみると、「小さい頃の私と、今の私って全然違う」と感じる人も多いはずです。
本当の自分は、幼少期に戻ることだけで見つかるわけではありません。
子どもの頃の姿は“ヒント”にはなるけれど、それは素材にすぎません。
大人になって葛藤や変化をくぐり抜けたあとに「統合」された進化形こそが、本来の自分の姿です。
ここでは、その視点をベースに「本当の自分」の定義やサイン、そして思い出すための具体的なステップをまとめます。
Contents
本当の自分とは?定義と誤解
ではまず、「本当の自分」とは何なのか。ここで一度、立ち止まって考えてみましょう。
自己啓発の本や講座では「本当の自分に出会おう」「本当の自分を見つけよう」という言葉がよく使われます。
でもいざ参加してみても、「結局よくわからなかった…」という声も少なくありません。
なぜなら、肝心の「本当の自分って何?」という定義が、最初から曖昧なまま進んでしまうからです。
私は「本当の自分」とは役割や肩書きではなく、選択の核だと考えています。
「私はこれを選びたい」「これは大切にしたい」と心から感じられる基準。それが本当の自分の正体です。
1. 本当の自分の定義
ここで大事なのは、“状態”でとらえることです。
たとえば外からの評価や損得ではなく、自分の感覚に沿って選べているとき──。
そのしっくり感や自然さ、心の静けさが「本当の自分でいられる」状態を教えてくれます。
だから本当の自分とは、ひとつの固定された像ではなく、「感覚の寄せ集め」。
その感覚に沿って選択しているとき、人は「これが私だ」と実感できるのです。
2. 幼少期=素材、大人=進化形
「本当の自分=幼少期」と思われがちですが、それは一部のヒントにすぎません。
子どもの頃の「好き」「嫌い」は確かに純粋な素材ですが、それがそのまま答えになるわけではありません。
むしろ、大人になって多くの経験や葛藤をくぐり抜けたあとに、それらの断片が再構成され、進化したかたちで現れる。それが「本当の自分」の開花した姿だといえます。
3. よくある誤解
「本当の自分」を探すとき、次のような思い込みには注意が必要です。
- 才能や職業=本当の自分と思い込んでしまう
- 診断やタイプ分けで答えが固定できると信じてしまう
- 幼少期そのものが答えだと誤解してしまう
これらはどれも部分的な切り口にすぎません。
本当の自分は「探す」のではなく、覆いを外して“思い出す”プロセスの中で見えてくるものなのです。
本当の自分に再会するには?
「本当の自分に出会いたい」「もう一度つながりたい」と思ったとき、何から始めればいいのでしょうか。
一言でいうと、その思いを持ち続けることです。
「本当の自分を知りたい」「再会したい」という意図を持った状態で日常を過ごす。これが最初のステップです。
脳科学の言葉で言えば、これは RAS(脳の網様体賦活系)の働きです。
意図を放つと、脳はそのテーマに関わる情報を優先的にキャッチするアンテナを立てます。
すると、偶然のように見えても「気づき」や「きっかけ」との出会いが増えていきます。
そして、その出来事の中で大切になるのが「自分の感覚をチェックすること」です。
「心が軽くなったか」「自然に笑顔になったか」「逆に重さを感じたか」──本当の自分は感覚の中に隠れています。
日常の中で小さな欠片を拾い集めることが、再会への道筋になります。
本当の自分に近づく・遠ざかるサイン
では実際に、どんなサインを手がかりにすればいいのでしょうか。
ここでは「近づいているサイン」と「遠ざかっているサイン」を、それぞれチェックリストとしてまとめます。
本当の自分に近づいているサイン
- 決めたあとに、心身がふっと軽くなる
- 小さな行動にも、満足感や余韻が残る
- 気づけば時間を忘れて没頭している瞬間がある
- 休めば、しっかりとエネルギーが回復する
- 他人と比べなくても「これでいい」と思える
- 選んだことに後悔よりも納得が残る
- 感情が自然に出てきて、抑えなくても流れに乗れる
- 人の成功や幸せを素直に喜べる
- 未来を考えたときに、静かなワクワク感がある
本当の自分から遠ざかっているサイン
- 決断しても、モヤモヤが長く残る
- 人の評価や反応に強く振り回される
- 休んでも、疲れや虚しさが抜けない
- 「生きているのに空っぽ」という感覚が続く
- 何を選んでも「正解探し」ばかりになってしまう
- 他人の幸せを見ても素直に喜べず、心がざわつく
- 感情が湧かず、麻痺したように感じる
- 行動しても「頑張ってるのに満たされない」感覚が強い
- 未来を考えると、不安や空白感に押しつぶされそうになる
このサインを日常の中でチェックしていくと、「近づいている感覚があるとき」「遠ざかっている感覚があるとき」が少しずつ区別できるようになります。
本当の自分は、突然見つかるものではなく、小さなサインの積み重ねの中で自然に“輪郭が浮かんでくる”存在です。
「自分がわからない」背景と統合のプロセス
「本当の自分」を見失うのは、決して特別なことではありません。
多くの場合、その背景にはいくつか共通のパターンがあります。
ここでは代表的なものを5つ取り上げます。
1. 幼少期の環境
親がなんでも先回りして決めてしまうと、子どもは「自分で選ぶ」経験を奪われます。
今日着る服も、遊ぶことも、進む道も──すべて整えられてしまううちに、「自分の感覚はいらないんだ」と思い込んでしまうのです。
一方で、放っておかれすぎても似たようなことが起きます。
泣いても応えてもらえない、意見を口にしても取り合ってもらえない。
そんな日々が続くと「どうせ自分の気持ちは意味がない」と感じるようになります。
過干渉と放任。正反対の育ち方に見えても、共通しているのは「自分の感覚が軽んじられた」という経験です。
大人になってから「あなたはどう思う?」と聞かれても、すぐに答えられないのは自然なことなのです。
2. 対人関係の傷
「自分を出したら叩かれた」「素直に気持ちを言ったら笑われた」──そんな経験があると、人は自分を奥へ奥へと隠すようになります。
- いじめ
- 仲間外れ
- 職場での無視
どれも小さな出来事に見えても、積み重なると「自分を出す=リスク」という思い込みが強く刻まれます。
結果として「自分を出さないほうが安全」と学び、本来の核はますます遠くに追いやられてしまうのです。
3. 感受性の高さ
HSPやエンパスといった気質を持つ人は、生まれつき感受性が高く、人の感情や空気を敏感にキャッチします。
その力は大きな強みでもありますが、境界線が薄いため
「これは自分の気持ち?それとも相手のもの?」
と混乱しやすいのです。
結果として「自分の感覚」がかき消され、何を感じているのかがわからなくなることもあります。
敏感さはギフトですが、それが行き過ぎると「自分の輪郭を失う」という課題につながるのです。
4. 役割の変化
人生には大きな節目がいくつもあります。就職、結婚、出産、子育て、そしてミッドライフ。
そのたびに新しい役割が与えられ、同時に今までの役割が剥がれ落ちていきます。
「社会人として」「妻として」「母として」──役割をこなしているうちに、「私は誰なのか?」という問いが自然に浮かびます。
役割に適応する力は必要ですが、それが強すぎると「役割=自分」となり、本当の自分が見えなくなってしまうのです。
5. 感情を抑える習慣
「泣いてはいけない」「弱音を見せてはいけない」。
そんな環境で育ったり、職場で成果や理性ばかりが求められると、感情を抑えるのが習慣になります。
最初は「必要な我慢」かもしれません。
けれど、長く続けると感情センサーそのものが鈍っていきます。
悲しいのに泣けない、嬉しいのに心が動かない。そうなると「私は何を感じているんだろう?」と、ますます自分を見失ってしまいます。
これらはどれも「核を覆い隠すプロセス」と言えます。
幼少期、対人関係、感受性、役割、習慣──いずれも、本来の自分を守るために身につけた“覆い”にすぎません。
大人になった今だからこそ、その覆いを少しずつ外していけます。覆いの奥に眠っているものこそが、あなたにとっての「本当の自分」なのです。
本当の自分を思い出す5つの質問
「本当の自分」とは、新しくつくり直すものではありません。
むしろ、日々の選択や経験の中で見失ってきたものを、少しずつ思い出していくプロセスに近いのです。
ここで大切なのは、幼少期=そのまま本当の自分 ではない、ということ。
ただし子どもの頃の姿には、核へと近づくための要素が数多く眠っています。
その断片を今の自分に照らし合わせることで、輪郭が浮かび上がってくるのです。
その手がかりとなる問いを、5つ用意しました。
1. 子どもの頃、自然に夢中になれたことは?
遊びや遊具に限らず「気づけば時間を忘れていたこと」を思い出してみましょう。
そこには「努力しなくてもエネルギーが湧く」ヒントが隠れています。
2. 学校の休み時間はどう過ごしていましたか?
友達とわいわい遊んでいたのか、一人で静かに過ごすのが好きだったのか。
小さな選び方の中に、今も変わらない気質が現れています。
3. 最近、心が大きく動いた瞬間は?
感動や怒り、悲しみ──強く心が動いた場面は、価値観が刺激された証拠です。
そこから「本当に大切にしたいもの」が見えてきます。
4. 繰り返し出てくる悩みは何ですか?
同じテーマで悩むのは、そこに「核とずれた選択」があるから。
悩みを避けずに眺めると、逆に自分の軸が浮かび上がります。
5. 諦めてきた憧れはありますか?
「現実的じゃない」と片付けてきた夢の中に、本当の自分の声が潜んでいます。
一度諦めたことを見直すことで、眠っていた願いに再び触れられます。
これらの問いに答えるだけで、核の輪郭が少しずつ見えてきます。
「幼少期の断片」と「今の感覚」を重ね合わせることで、あなただけの本当の自分が姿を現していくでしょう。
よくあるつまずきと解決のヒント
本当の自分を探す過程では、誰もが似たような壁にぶつかります。
大切なのは「つまずくのは当たり前」と知り、そこからどう修正できるかの視点を持つことです。
1. 感情が動かない/判断できない
「何を選んでもピンと来ない」「どれも同じに見える」──そんな感覚になるときがあります。
これは感情センサーが疲れているサイン。
まずは「自分がわからない」と感じる状態を整理することが大切です。
感情を文字に書き出したり、既存の「自分がわからない」記事を参考にチェックリストを活用することで、少しずつ感覚が戻ってきます。
2. 他人基準に流される
「人に合わせすぎて自分の意見が見えなくなる」ことは誰にでもあります。
特にHSPやエンパス気質の人は、他人の感情を取り込みやすいため、自分との境界が曖昧になりがちです。
この場合は、境界線を学び直すことが有効です。
日常で「これは相手のもの、これは自分のもの」と区別する練習を積むことで、少しずつ自分の声を拾えるようになります。
3. 人生の節目で揺らぐ
就職、結婚、子育て、転職、ミッドライフ──人生の大きな節目では、どんな人でも自己像が揺らぎます。
「今までの自分ではいられないのでは?」という不安は自然なもので、むしろ成長の証でもあります。
ライフステージごとの変化を「危機」と見るのではなく「次の自分を迎える準備」と受け止めることで、揺らぎを力に変えられます。
まとめ|本当の自分は“進化形を思い出す”こと
本当の自分は、どこか遠くに探しに行くものではありません。
子どもの頃にむき出しで現れていた「好き」「夢中」の断片は、核へとつながる大切な素材です。
大人になった今、私たちはその断片を経験や葛藤を通して組み合わせ、ひとつの進化形として表現しています。
それが“本来の自分”の姿です。
新しくつくり出す必要はありません。
むしろ、これまで身につけてきた覆いを一枚ずつ外しながら「思い出す」こと。
その積み重ねが、あなたと本当の自分との再会につながっていきます。
幼少期のヒントをたどりながら、今の自分が自然に心地よく選べる道を重ねていくこと。
そこにこそ、本当の自分と出会う確かな道があります。