「自分を大切にしましょう」という言葉は、道徳的な意味で使われることもあれば、自己啓発や成功法則、人間関係やコミュニケーションの文脈でもよく語られます。
ですが、これだけ広く使われている一方で、具体的に何をどうすれば、自分を大切にしていることになるのかは意外と曖昧です。
自分を大切にすることが大事だと知って、「じゃあ自分を大切にしてみよう」と思っても、その次の段階で
「自分の何を大切にすればいいのか」
「実際には何をすればいいのか」
そう最初の一歩で迷ってしまう人も少なくないでしょう。
この記事では、自分を大切にするとは具体的に何を大切にし、どう行動することなのかを整理していきます。
Contents
自分を大切にする3つの要素
「自分を大切にする」という言葉は抽象的ですが、「自分に深く結びついているものを大切に扱うこと」と考えてみるとわかりやすいでしょう。
具体的には、自分の身体、感情、望みという3つの要素を大切にすることが基本です。
1. 身体を大切にする
まず1つ目は、自分の身体を大切にすることです。
「自分」というものを最もわかりやすく実感できるのが、自分の身体です。
毎日を生きるのも、誰かと関わるのも、すべて身体があってこそ成り立ちますが、大きな問題がないとつい後回しになりやすいものです。
- 疲れていても休まない
- 眠くても睡眠時間を削る
- 食事を後回しにする
- 痛みや違和感を放置する
- 体調が悪くても予定を優先する
こうした状態が続けば、身体には少しずつ負担がたまっていきます。
身体の状態に気を配ることは、自分を大切にするうえで最も基本的なことです。
2. 感情を大切にする
2つ目は、自分の感情を大切にすることです。
私たちは社会生活を送る上で、感情よりも立場や役割を優先して過ごしている人が多いでしょう。
また、感情を抑える必要がない場面であっても、うれしい、楽しい、安心する、といった感情は受け入れやすい一方で、
- 怒り
- 嫉妬
- 恨み
- 悲しみ
- 絶望
- 嫌悪感
といった感情は、ついなかったことにしやすいものです。
感じること自体がしんどくて、見ないようにしてしまったり、怒りのような感情を「感じてはいけないもの」として扱ってしまったりすることもあります。
けれど、どのような感情であっても、自分の中から自然に生まれてきたものです。
その感情のまま行動する必要はありませんが、自分の中に生まれた感情そのものを否定しないことは大切です。
どんな感情であっても、なかったことにせず大事に扱うことは、自分自身を大切に扱うことにつながります。
3. 望みを大切にする
3つ目は、自分の望みを大切にすることです。
「自分はどうしたいのか」
大人になるほど、この問いにすぐ答えられなくなる人も増えていきます。
- 何をするべきか
- 周りから何を求められているか
- どちらを選べば人に迷惑をかけないか
こういった外部に適応することが多くなり、一方で、自分が本当はどうしたいのかは後回しになりやすくなります。
望みを大切にするということは、叶えられるかどうかを一旦脇において、自分の望みを認識しておくこととも言えます。
そして「自分の望みを大切にする」ことが、自分を大切にすることにつながっていきます。自分の気持ちや本音を整理するときには、自己対話という方法も役立ちます。
自分を大切にする具体的な方法
自分を大切にすることとは、身体・感情・望みを大切にすることであると聞いても、具体的にどうすれば、それらを大切にしていることになるのかイメージしにくいかもしれません。
ここからは、先ほど挙げた3つの要素を、日常の中でどのように扱えばいいのかを具体的に見ていきます。
特別なトレーニングを始めなくても、こうした確認を日常の習慣にしていくこと自体が、自分を大切にする練習になります。
1. 身体の感覚に意識を向ける
1つ目は、身体の感覚に意識を向けることです。
「健康は失って初めてその大切さに気づく」と言われるように、普段大きな不調がなければ、身体が動くことや健康でいることを当たり前のように感じやすく、多少の疲れや違和感は後回しにしてしまいがちです。
身体を大切にするうえでは、健康状態と身体感覚の2つに目を向けるとわかりやすくなります。
まずは、今の身体がどのような状態なのかを確認します。
たとえば、
- 疲れがたまっていないか
- 睡眠は足りているか
- 暑すぎたり寒すぎたりしないか
- 身体が重く感じていないか
- 痛みや違和感を我慢していないか
といったことです。
そしてもう一つが、身体感覚です。
ある場所に行くと身体の力が抜ける。
反対に、特定の人や場所では身体が強く緊張する。
何かに触れた瞬間にゾワッとする。
「生理的に合わない」という表現があるように、頭ではまだ理由を説明できなくても、身体が先に反応している場合があります。
健康状態だけでなく、こうした身体の小さな反応にも意識を向ける。
それも、身体を大切にする具体的な方法の一つです。
2. 感情を否定せず言葉にする
2つ目は、自分の感情を否定せず、言葉にしてみることです。
感情には、うれしい、楽しい、安心するといった受け入れやすいものもあれば、怒り、嫉妬、悲しみ、絶望、嫌悪感など、できれば感じたくないものもあります。
自分を大切にするという意味では、まず感情そのものに優劣をつけないことが大切です。
「怒ってはいけない」
「こんなことを嫌だと思う自分はよくない」
と、出てきた感情をすぐに否定するのではなく、まず自分が何を感じているのかを認識します。
そのための具体的な方法として、感情を言葉にしてみるのも有効です。
たとえば、
- 今日嫌だったことを書き出す
- 腹が立った理由を言葉にする
- 悲しかったことをそのままノートに書く
- うれしかったことや心が動いたことも記録する
きれいに整理する必要はありません。
自分の中にどんな感情があるのかを、そのまま確認するために書き出します。
また、映画やドラマ、小説、音楽などに触れて、感情を動かす時間を持つのも一つの手です。
普段感情を抑える時間が長い人ほど、意識して自分の感情に触れる時間を作ることで、自分が何を感じているのかをつかみやすくなります。
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3. 自分の望みを否定せず認識する
3つ目は、自分の望みを否定せず認識することです。
望みには、さまざまな大きさがあります。
今すぐ叶えられそうな小さなものもあれば、少し先の未来に関わるもの、自分個人の枠を超えた願いや祈りに近いものもあるでしょう。
- 喉が渇いたから水を飲みたい
- 今日は早く帰って休みたい
- いつか会社員を辞めてフリーランスになりたい
- こんな場所に住んでみたい
- こんな人生を送りたい
- 世界がもっと平和になってほしい
大人になるにつれて、現実を見ることや、身の丈に合った選択をすることを求められる場面は増えていきます。
その中で、
「そんなことは無理」
「今さら遅い」
「現実的ではない」
と、自分の望みが浮かんだ瞬間に打ち消してしまいがちです。
望みを大切にするというのは、実現できるかどうかを判断する前に、「望むこと」そのものに制限をかけないこととも言えます。
こうした身体・感情・望みへの向き合い方は、自分を大切にする人の特徴としても表れます。特別なことをしているというより、自分の状態を確認し、無視しないことが日常の習慣になっているということです。
自分を大切にできない理由
ここまで、自分を大切にするための3つの要素と、その具体的な方法について解説してきました。
ただ、自分を大切にした方がいいとわかっていて、具体的なやり方まで理解していても、なぜかうまくできない人もいます。
「やった方がいいのはわかるけれど、あまりそうしたいと思えない」
「方法はわかったけれど、なぜかしっくりこない」
「頭では理解できても、実際にやろうという気持ちになれない」
そんな場合は、単に方法がわからないのではなく、心の奥に別の理由が隠れていることがあります。
これまでの人間関係や経験の中で身についた考え方が、自分を大切にすることを止めている場合もあります。
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自分を大切にするとどのように人生が変わるのか
では、自分を大切にすると、どのような変化が起きるのでしょうか。
自分を大切にするというと、どこか道徳的な話に聞こえるかもしれませんが、実際には日々の選択や人との関わり方にも影響します。
自分自身をどう扱うかが変われば、その前提で選ぶものも変わっていきます。
ここでは、自分を大切にすることで変化が表れやすい代表的な3つの分野を見ていきます。
1. 自分との関係が変わる
自分を大切にし始めると、まず変わるのが自分自身との関係です。
- 疲れている自分を無視しない
- 嫌だと感じている気持ちを押し込めない
- 自分の望みを最初から否定しない
こうしたことを重ねていくと、自分の感覚を以前より信頼しやすくなります。
自分が感じていることや考えていることを、自分自身がきちんと扱うようになるからです。
その積み重ねは、自己肯定感や自己信頼感にもつながっていきます。
「自分のことを自分で信用できる」という感覚が育ってくると、何かを選ぶときにも、以前より自分の判断に自信を持ちやすくなります。
2. 人間関係が変わる
自分を大切にするようになると、人との関わり方も変わっていきます。
- 嫌われたくないから我慢する
- 相手に合わせるために、自分の気持ちを後回しにする
- 傷ついていても、その関係から離れられない
自分を大切にしていないと、こうした関係を続けてしまう場合があります。
一方で、自分の感情や望みを大切にするようになると、「この関係の中で自分はどう感じているのか」にも目が向くようになります。
その結果、無理に合わせ続けることが減ったり、距離を取った方がいい相手に気づいたり、人との付き合い方そのものが変わっていきます。
3. 働き方やキャリアが変わる
仕事も、自分を大切にすることの影響が表れやすい分野です。
身体が限界に近づいていても働き続ける。
強いストレスを感じていても我慢する。
本当は違う働き方を望んでいても、現実的ではないと諦める。
こうした選択も、自分の身体や感情、望みをどのように扱っているかと無関係ではありません。
自分を大切にするようになると、
- 今の働き方に無理はないか
- この職場で我慢しすぎていないか
- 本当はどのように働きたいのか
といったことにも目を向けるようになります。
すぐに仕事を辞めたり、大きくキャリアを変えたりせずとも、自分に合う働き方を主体的に選ぶ力がついてくるでしょう。
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自分を大切にするときのよくある勘違い
自分を大切にすると人生が変わると知り、「自分もやってみよう」と思っても、やり方を少し取り違えると空回りしてしまうことがあります。
最後に、自分を大切にしようとしたときに陥りやすい、代表的な勘違いについて触れておきます。
1. 他人に自分を大切にさせようとする
自分を大切にするというのは、基本的には自分が自分をどう扱うかという話です。
ところが、自分を大切にしようと意識し始めると、
「どうして私のことをもっと大切にしてくれないのか」
「私は大切にされるべきなのに」
と、いつの間にか他人に自分を大切にさせようとする方向へ向かってしまう場合があります。
もちろん、相手に希望を伝えたり、嫌な扱いを断ったりすることは必要です。
ただ、自分を大切にすることと、相手をコントロールして自分を大切にさせることは別です。
まず自分が、自分の身体や感情、望みをどう扱うのか。
自分を大切にすることは、そこから始まります。
2. 他人を大切にしなくていいと思う
自分を大切にすることと、他人を大切にすることは、本来どちらか一方を選ぶものではありません。
自分も大切にする
他人も大切にする
この両方が成り立ちます。
それまで他人を優先しすぎてきた人ほど、自分を大切にしようとしたときに、今度は反対側へ大きく振れてしまうことがあります。
しかし、自分を大切にするために、相手の気持ちや事情を無視する必要はありません。
他人を粗末に扱うことが、自分を大切にすることになるわけでもありません。
自分のことを消さず、同時に相手のことも尊重する。
その両方を持つことが大切です。
3. 欲望をそのまま優先することではない
今まで長く我慢してきた人ほど、自分を大切にしようとしたときに、その反動で欲望を強く優先しすぎることがあります。
やりたいことをやる。
食べたいものを好きなだけ食べる。
働きたくないから一切働かない。
欲しいものを我慢せず手に入れる。
こうしたこと自体が悪いわけではありません。
ただ、自分を大切にすることは、そのときに出てきた欲望をすべてそのまま通すことではありません。
たとえば、甘いものが食べたいという欲求を毎回そのまま優先し続けて、身体の調子を崩してしまったら、それは望みを大切にしている一方で、身体は大切にできていません。
自分を大切にするというのは、欲望だけを見るのではなく、身体・感情・望みの全体を見ながら、自分にとって何が大切なのかを考えることです。
自分を大切にしながら生きる
ここまで、自分を大切にするとは具体的に何を大切にすることなのか、身体・感情・望みの3つに分けて見てきました。
ただ、もっと大きく捉えると、自分を大切にするというのは、何か一つの方法やテクニックというより、生きる姿勢そのものに近いものです。
自分を大切にできているか、できていないかを、合格か不合格かのように判定する必要はありません。
大切なのは、完璧にできているかどうかではなく、
自分を大切にしながら生きていこうとする意思があるか
ということです。
身体の状態に気を配る。
感情をなかったことにしない。
自分の望みを最初から否定しない。
この記事では、その姿勢を具体的にするために、いくつかの方法を紹介してきました。
最初の一歩は、これからは自分を大切にしながら生きてみようと決めることです。
その姿勢が、これからの選択や人間関係、働き方、そして人生の展開にも少しずつ影響していきます。