
また同じパターンで恋愛が終わってしまった……
なぜか毎回、似たようなことで関係が壊れる気がする
どうして私は、こんなにも同じことを繰り返してしまうんだろう
そんな風に感じたことはありませんか?
恋愛やパートナーシップがうまくいかないとき、自分の心に何か原因があるのでは…と考え始める方も多いと思います。
そこから心理学やスピリチュアル、心のしくみに関する本を手に取るようになる――というのは、よくある自然な流れです。
そして、そうした過程のなかで「アダルトチルドレン(AC)」という言葉に出会う方も少なくありません。
アダルトチルドレンとは、子ども時代の家庭環境や親との関係に深い影響を受けたまま大人になり、その心の傷が対人関係、とりわけ恋愛に影を落とす状態を指します。
恋愛がうまくいかないのは、もしかして私がアダルトチルドレンだから?
そう思い当たる節がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、恋愛で同じような失敗を繰り返してしまう背景にある“心の構造”を紐解きながら、アダルトチルドレンが陥りやすい恋愛パターン、そしてその奥にある心理的メカニズムについてお伝えしていきます。
Contents
アダルトチルドレンとは?
まず初めに「アダルトチルドレン(Adult Children)」という言葉について、簡単にご紹介します。
これは医学的な診断名ではなく、子ども時代に家庭内で心に大きなストレスを抱えながら育ち、その影響を大人になっても引きずっている人たちを指す言葉です。
アダルトチルドレンとインナーチャイルドの違いとは?
「アダルトチルドレン」と似た言葉で、「インナーチャイルド」という概念を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
どちらも“子ども時代の心の傷”に関係する言葉ですが、意味やアプローチには少し違いがあります。
アダルトチルドレンは、機能不全の家庭環境で育ち、大人になってもその影響が残っている“人”を指す言葉です。
つまり、「状態」や「生きづらさを抱えている大人そのもの」に焦点が当たっています。
一方で、インナーチャイルドは、子どもの頃に感じた悲しみ・怒り・寂しさなどが、今も心の中に“内なる子ども”として存在している、という考え方です。
こちらは「心の一部」「感情の層」を示す概念であり、癒しや対話の対象になります。
ざっくり言えば、
アダルトチルドレン=大人になった“今の私”に表れている問題やパターン
インナーチャイルド=“過去の私”が今も心の中で感じている痛み
という関係性です。
両者は切り離せるものではなく、むしろ密接に関係しています。
アダルトチルドレンとしての生きづらさに気づいたとき、インナーチャイルドと向き合うことが、癒しへの第一歩になることも多いのです。
アダルトチルドレンと家庭環境
では、アダルトチルドレンと呼ばれるような状態は、どのような家庭環境の中で育つと起きやすいのでしょうか。
背景は人それぞれ異なりますが、共通しているのは、「子どもが子どもらしくいられなかった」という点です。
たとえば、こんな家庭環境に心当たりはないでしょうか。
- 両親の仕事が忙しく、いつもひとりで過ごす時間が多かった
- 親の暴力(DV)におびえながら毎日を過ごしていた
- 親が情緒不安定で、子どもである自分が“親の心の支え”になっていた
こうした家庭の中で育った子どもたちは、本来守られるべき存在であるはずが、むしろ“家族を支える側”に回ることを求められがちです。
最近では「ヤングケアラー」という言葉も知られるようになりましたが、それに近い立場で幼少期を過ごした方も多いかもしれません。
心の成長に必要な土台が育たないまま、感情を後回しにして大人になる。
その結果として、心の奥に置き去りにされた痛みが、大人になった今も恋愛や人間関係に影を落とす――
それがアダルトチルドレンの本質なのです。
大人になってからの恋愛にもアダルトチルドレンの影響が残る
アダルトチルドレンの特徴をひとことで表すなら、それは「自尊心や自己肯定感の低さ」です。
本来、子どもは誰にも遠慮せずに、当たり前のように愛情を受け取る存在です。
けれども、アダルトチルドレンに該当する人たちは、その“当たり前”が小さな頃から叶えられてこなかった経験を持っています。
たとえば、自分の感情やニーズを無視されたり、家庭の事情によって「甘えること」や「わがままを言うこと」を許されなかったり。
そうした経験を積み重ねるうちに、次第にこんな思い込みが根づいていきます。
ここに存在するためには、何か役に立たなきゃいけない
誰かの役に立つことでしか、自分はいてもいいと言ってもらえない
こうして、自分を後回しにし続ける“犠牲型”の心理パターンができていきます。
あるいはその逆に、内側に空いた穴を埋めようとして、今度はこうした思いに変わっていくこともあります。
私は自分で自分のことを肯定できない。だから、あなたが私を認めて
ここにいてもいいって、あなたが証明してよ!
このように、自己承認を外側に強く求める“依存型”の傾向に転じるケースもあるのです。
どちらも、根っこにあるのは「愛されなかった経験による深い痛み」と言えるでしょう。
アダルトチルドレンはコミュニケーションが苦手?答えはNo
ここまで読んで、
アダルトチルドレンってちょっと面倒な人なのかな…人との関係がうまく築けないタイプなのかも
と思われた方もいるかもしれません。
ですが、実際はその逆で、人当たりがよく、誰とでもうまくやっているように見える人も多いのです。
なぜなら彼らは、幼いころから「自分の居場所をつくるためには、周囲のニーズに応える必要がある」と学習してきたから。
その結果として、場を盛り上げたり、空気を読んで振る舞ったりと、コミュニケーション力を“戦略的に”高めている場合もあります。
つまり、外から見ると人気者でも、内面では常に緊張感や不安を抱えている――そんな二重構造を持っていることも、アダルトチルドレンの大きな特徴のひとつなのです。
アダルトチルドレンが陥る恋愛パターンとは?
自分の感情を抑えたり、他人に合わせて生きてきたアダルトチルドレンの人たちは、大人になって恋愛を始めたときにも、その影響が色濃く表れやすい傾向があります。
なぜか毎回うまくいかない。
相手を変えても、状況を変えても、繰り返されるような恋愛のトラブル。
実はそこには、アダルトチルドレン特有の「無意識の選び方」や「心のクセ」が関係していることが少なくありません。
ここからは、そうした“恋愛のパターン”にどんな傾向があるのか、具体的に見ていきましょう。
親に似た人を選ぶ「リベンジ恋愛」
アダルトチルドレンの恋愛で、最も多く見られるのが、「親に似たパートナーを無意識に選んでしまう」というケースです。
もちろん、本人にその自覚はありません。
「親に似ているかどうか」なんて気にしたこともないという方がほとんどでしょう。
けれど実際には、どこかで出会った相手に惹かれ、気づけば深く関係を築いていた相手が――
あとから振り返ると、「あれ?あのときの母に似てるな」「父がしていたような言動がある」と感じるような人物だった、ということが珍しくないのです。
なぜそんなことが起きるのかというと、そこには心の奥底に眠っている“満たされなかったニーズ”が関係しています。
本当はもっと愛されたかった
なぜ、あのとき優しくしてもらえなかったんだろう
大事にされる私でいたかった
こうした気持ちを抱えたまま大人になったとき、私たちの無意識は、“あのとき得られなかった愛”を、もう一度やり直そうとします。
それが、親に似た気質を持つ相手に惹かれるという形で現れるのです。
そしてその相手から今度こそ愛されることで、過去の心の傷を癒したい。
「やっぱり私は大丈夫だった」と、自分の存在価値を回復したい。
そんな強い欲求が働く――それが、いわゆる「リベンジ恋愛」です。
つまりリベンジ恋愛とは、単なる恋愛感情ではなく、「愛されなかった過去を今の恋で上書きしようとする無意識の試み」とも言えるのです。
けれど、この恋愛のかたちは、残念ながら、うまくいかないことも多く――
次の段落では、その“うまくいかない理由”について見ていきましょう。
恋愛がうまくいかないループの正体
リベンジ恋愛には、心の深いところにある「やり直したい」「愛されたかった」という切実な想いが込められています。
しかしその願いは、しばしばこんな“お決まりの流れ”に巻き込まれてしまいます。
親に似た人と出会う
→ 好きになる
→ お付き合いしたいと距離を縮める
→ お付き合いが始まる
→ ふとしたきっかけでトラブルが起きる
→ ネガティブな感情が噴き出す
→ 関係がぎくしゃくし、やがて破綻する
このループを繰り返してしまう人は、実は少なくありません。
最初はたしかに心惹かれたはずの相手。
けれど関係が深まるにつれて、なぜか感情が大きく揺さぶられる場面が増え、相手に対する不安や怒りが強くなっていきます。
すると、自分でも制御できないほどの「傷つきたくない」「見捨てられたくない」という感情が噴き出し、トラブルやすれ違いが起きやすくなるのです。
そしてその結果、
やっぱり私には愛される価値がなかったのかな…
という自己否定に戻ってしまう。
この繰り返しが、アダルトチルドレンにとっての“恋愛のしんどさ”の本質かもしれません。
しかも、このループは「無意識」で起きていることが多いため、頭では“わかっている”のに、なぜか同じパターンに引き寄せられてしまうというのも、厄介なポイント。
次のパートでは、なぜ人はその無意識に気づけず、恋愛で同じ感情のループを辿ってしまうのかを、さらに深く見ていきます。
自分の感情に気づけない恋愛ループ
ではなぜ、同じような恋愛パターンを繰り返してしまうのでしょうか。
その根っこには、「自分の感情に気づけないまま、恋愛にのめり込んでしまう」という構造があります。
多くの人は、自分が親に似た人を求めているとは気づいていません。
むしろ、まったく別の人を選んでいるつもりだったり、
今度こそは…!
と新たな恋に希望を抱いているケースがほとんどです。
けれど、なぜかまたうまくいかない。
傷ついたり、愛されていないように感じたり、相手の言動に過敏に反応してしまったりする。
そして関係がこじれると、今度はこんなふうに思い始めます。
やっぱり私には魅力がないのかな…どうして恋愛だけがうまくいかないんだろう…
そうやって自分を責めるループに陥っていくのです。
親に似た人からの愛情は“発泡酒”のようなもの?
少しイメージを借りてお話しすると、これは「本当は生ビールが飲みたかったのに、いつの間にか発泡酒でごまかしていた」というような状況に似ているかもしれません。
かつて本当に欲しかったもの――つまり、子どもの頃に得られなかった無条件の愛情や安心感。
けれどそれを得られなかった経験があまりにも苦しかったために、人はその“欲しさ”すら感じないようにしてしまうのです。
そして大人になって出会った誰かが、自分の傷にどこか似た“喉越し”を持っていたとき、
これで癒されるかもしれない
と希望を抱いて近づいていく――それがリベンジ恋愛です。
でも、発泡酒は生ビールではありません。
見た目や味は似ていても、心の深い飢えまでは満たしてくれない。
そのズレに気づけないまま恋を進めると、「なぜか満たされない」「物足りない」「思っていたのと違う」という感覚に襲われ、混乱してしまうのです。
この“なんとなく違う”というモヤモヤが、やがてトラブルを呼び、関係を崩していく。
それが、自分の感情に気づかないまま進んでしまう恋愛の落とし穴なのです。
リベンジ恋愛から復讐恋愛へ
リベンジ恋愛は、アダルトチルドレンが抱える「過去に愛されなかった痛み」を、今度こそ癒そうとする試みでした。
けれど、たとえ一時的にその願いが叶い、親に似たパートナーと関係が築けたとしても、そこで終わりにはなりません。
むしろ、関係が深まることで、心の奥に封じ込めていた感情や本能的な反応が、じわじわと浮かび上がってくるのです。
そしてその第二段階として現れるのが、「復讐恋愛」とも言えるフェーズです。
軽めのアダルトチルドレンの恋愛傾向
アダルトチルドレンのなかには、親からの愛情が「不十分ではあったけれど、まったく無かったわけではない」という人もいます。
そうした方は、恋愛によってある程度の安心や満足を感じることもできるでしょう。
完全ではないけれど、まあこれでもいいか
本当はもっと欲しかったけど、今はこれで落ち着ける
そんなふうに、心のどこかで折り合いをつけられることもあります。
いわば、一定の“手打ち”が可能な状態とも言えます。
重めのアダルトチルドレンの恋愛傾向
一方で、もっと深いレベルで心に傷や怒りを抱えている場合は、話が変わってきます。
特に「愛されなかった」だけでなく、「傷つけられた」「攻撃された」経験がある人にとって、恋愛は単なる癒しの場にはなりません。
たとえば――
- 存在を無視された
- 暴力や怒鳴り声のはけ口にされた
- 親の情緒不安定の犠牲にされた
こうした経験を持つ人にとって、「親に似た相手と関係を築けた」という出来事は、心の奥に眠っていた“積年の恨み”を呼び起こす引き金になることがあります。
関係が深まったとき、本来ならば安心や信頼が育まれていくはずなのに、代わりに心の底から湧き上がるのは、理不尽さ・屈辱・怒り・反撃したい衝動といった感情。
このとき恋愛は、「過去の親との関係をなぞる場」から、「過去の痛みを晴らすための舞台」へと変わってしまうのです。
本人にその自覚がないまま、言葉や態度で相手をコントロールしようとしてしまったり、支配・拒絶のゲームに巻き込まれたりすることもあります。
結果として、せっかく築いた関係が壊れてしまうだけでなく、「自分はやっぱりうまくいかない」とさらに深い自己否定を呼び起こす――それが、復讐恋愛の怖さでもあります。
アダルトチルドレンでも恋愛は変えられる
ここまでお読みいただき、
もしかして私、アダルトチルドレンの恋愛パターンをなぞっているかも?
と感じた方もいるかもしれません。
ですが安心していただきたいのは、たとえ過去に、親から十分な愛情を受け取れなかったとしても――
その痛みを誰かとの関係のなかでやり直そうとしていたとしても――
自分のパターンに気づくことで、未来は確実に変わっていきます。
多くの心理学でも言われているように、恋愛と親子関係は、深くつながっています。
恋愛でつまずいたとき、それは親との関係性の“影”が映し出されているサインかもしれません。
でも、だからこそ無理に切り離すのではなく、恋愛と親との関係、両方を同時に癒していくという視点を持つことで、新しい扉が開くのです。
あなたの恋愛が、より健やかで、安心できるものになりますように。
そして、「自分を大切にすること」が、これからの人間関係すべての土台となっていきますように。